関志雄著 東洋経済新報社(332.22/K)
私が子どもだったころ、授業で学んだ中国は強固な共産主義国家だった(年齢がばれる?)。この間のサッカー日中戦で中国サポーターが顔にペインティングをしているのを見て、改めてこの国の変貌を感じた。全てが桁外れの規模で起きる国、だから世界中に大きな影響を及ぼす。一方で私が昔学んだままの状態で、取り残されてしまった地域もあり、その格差も問題になっている。本書は経済に焦点を当てているが、あらゆる面でもっと中国を知らなければならないとつくづく思う。(M)
有限責任事業組合フリーターズフリー編 人文書院(367.2/F)
有限責任事業組合であるフリーターズフリーが行った様々な対談をまとめたもの。フリーター問題というと女性が表に出てこない感じがある。実際には様々な問題が存在しているのに。例えば野宿女性の場合にはセックスワークや性暴力などもからんでくる。対談では、こうしたいわば隠され、「ないもの」にされてきたことについても語られている。(M)
外山滋比古著 筑摩書房(141.3/To79)
頭の働きを良くするには、知識を整理すること。知識が不当に多くなると、博識にはなるが、頭の活動はむしろ低下する。まったく新しいことを考えれば、自然に、不要な知識は消える。頭を良くすることは出来なくても、頭の中をきれいに、冴えたものにすることは不可能ではない。忘却はそのもっとも有効な手段、方法である。ものを考えようとするすべての人は、忘却の価値をはっきり認めなくてはならない。(T)
バーバラ・エーレンライク著 河出書房新社(361.42/E)
アメリカの無邪気な考え方と思われているポジティブシンキングは、医療の分野やビジネス界でも歓迎されていた考え方です。乳ガンからの「生還者」は尊敬され賞賛されるが、「戦いに負けた」殉教者は尊重されない。そういう考え方に対する疑問とそれに依存することの危うさを著者は指摘している。(T)
亀井伸孝著 京都大学学術出版会 (384.5/K)
森の小さなハンター」とは中部アフリカにすむ狩猟採集民ピグミーのこどもたち。時には自分の庭の様に走りまわる子どもたちを息を切らして追いかけたりしながら、生活をともにしていく中で日常生活、食事、狩猟、遊び、などの様子が描かれていく。子どもの視点で描き出された民族誌は余り類例がないそうだ。森の生活での学びとカトリックのミッションが設立したミッションスクールの存在という教育のあり方も興味深い。(A)
奥田実紀著 白水社(753.3/O)
地元由来のタータンチェックの格子柄の縦横線の色は、それぞれ島の特徴を表している。プリンス・エドワード島で著者が知ったこの「タータンチェックの真実」から著者の「タータンチェック探索の冒険」が始まる。一般人が身に着けて良いタータンといけないタータン、そもそもタータンという言葉は「チェック」を意味しない、など基本の知識から始まって、子どものころのプリーツスカートから、老舗デパートの袋の柄まで、親しみ深いものだけに、明かされる「真実」は「目うろこ」の連続だ。(A)
ポリー・トインビー、デイヴィッド・ウォーカー著 東洋経済新報社(361.8/T)
日本が「一億総中流」と言われたのも今は昔のこと。社会階層間の格差は大きく広がりつつある。
本書は、格差先進国であるイギリスの格差社会の実態を赤裸々に語ったものだが、全く他人事と済ませられないものがある。これからのわが国の進むべき社会のあり方を考える上でも、読んでおきたい一冊である。(Y)
岩下哲典・小美濃清明編 藤原書店(289.12/S)
今年は、某テレビ局の大河ドラマに取り上げられたこともあり、坂本龍馬はいつにも増して話題の人となった。テレビを観ていると、彼が、混迷期の幕末にあって、日本を超えて世界を見据えていた人物であったことがよくわかる。彼の世界認識とはどんなものであったのか、本書が、様々な資料をもとに解き明かす。(Y)