シドニー・デッカー著 東京大学出版会(326.1/D)
正直にヒューマン・エラーを告白し、裁判にかけられた看護師の例をあげ、純粋な正直さ、あるいは真実を語ることが、するべき正しいことだからという理由で、結果がどうなるかによらず、常にそうするべきかどうか考えさせられる。(T)
大熊一夫著 岩波書店(493.7/O)
1970年、朝日新聞に「ルポ・精神病棟」を連載した筆者によるルポ。「鉄格子や鉄の扉の奥に押し込めることを正当化するような精神状態など、本来ないのだ。精神病者のときおりの暴力は、結果であり抑圧で引き起こされた人間としての反応である。つまり、それは精神病院が引き起こす病気で、精神病院などやめて人間的存在たりうる暖かい状況に置くことができれば、精神病者の暴力などなくなるのだ。」という考えで精神病院をなくしたイタリアと日本の対比。(T)
荻原真著 洋々社(778.7/O)
本書のタイトルを見て、「崖の上のポニョ」が主体の評論と思いましたが、内容を確かめていくと「ポニョ」だけではなく、宮崎駿の代表的な作品を縦横無尽に行き来して、その章ごとのテーマに沿って色々なシーンを解説してくれています。また、宮崎アニメを詳細に観直したくなりました。(N)
杉浦俊彦著 技術評論社(613.1/S)
「地球温暖化が進むと大変なことになる」ので、「STOP!温暖化」とか、「エコな生活をしよう」という言葉は良く聞くのですが、では、何がどう大変なのかを具体的に教えてくれることは少ないと思っていました。本書は、温暖化が進むことによって、「農産物」がどのような影響を受けるのかを丁寧に解説してくれます。(N)
湯浅誠著 文藝春秋(368.2/Y)
しばらく前のことだが湯浅氏が内閣府参与となって官僚制度の中で悪戦苦闘する日々を追ったドキュメントを見た。氏が取り組んでいる貧困問題の解決はこの書名通り、まさに固い岩をこつこつと砕いていくような作業だ。テレビでも氏は何度も大きな壁に突き当たっていた。それでも希望を失わず、道を探す。ひとりひとりは弱くてもできることがある、と思わされる。 (M)
大山泰弘著 WAVE出版(366.2/O)
社員74人のうち7割が知的障碍者の小さなチョーク会社。50年前から知的障碍者を雇用してきた。社長である大山氏は、初めは施設にいるほうが楽なのにどうしてわざわざ働くのだろうと不思議に思ったそうだが、彼(女)たちに、人間の幸せは働くことによって得られると教えられる。労働をめぐっては明るい展望を持つことが難しい今日だが、働くことの本当の意味を思い起こしたい。 (M)
猪瀬秀博他著 日本評論社(585.7/I)
テトラパックから飲む牛乳がなぜかコップに入れた牛乳よりおいしかったのは私だけでは無いらしい(確か『サザエさん』でもそんな4コママンガがあったし)が、そんな昔から当たり前の様にある紙パック、実は「紙で液体を包む」というアイディア自体発想の大転換、しかもリサイクルの優等生でもあるという。その歴史や製造過程、使用後のリサイクルまで、紙パックについて丸ごとわかる一冊。 (A)
葉上太郎著 文芸春秋(369.2/H)
盲導犬というと「レトリバー」をつい連想してしまうが、ドイツから来た日本初の盲導犬4頭も、後に続く初期の盲導犬のいづれも、ドイツの軍用犬シェパードだった。また犬種のみならず、盲導犬の仕事も、ドイツでも日本でも、視力を失った戦傷兵の補助に始まる。「戦争」を背に生まれた一匹と一人の出会いが綴られていく。(A)
松田祐子著 大阪大学出版会(367.23/M)
1900年前後-ベル・エポックの、パリのブルジョア階級の主婦に焦点をあて、当時の新聞・雑誌記事を通して、彼女たちの生き方を同じ女性の視点から見つめる。表紙をはじめ、文中に掲載された当時の写真の数々が読者の目を楽しませてくれる。(Y)
高澤紀恵他編 山川出版社(213.6/P)
近世において、世界有数の人口を擁したパリ(17世紀50万人)と江戸(18世紀には何と100万人!)。この二つの伝統都市について、フランスと日本の新進気鋭の研究者が複数の観点から比較を試みる。日本とフランスの近世史に関心のある方にお勧め。(Y)