恵泉女学園大学

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犬の帝国 : 幕末ニッポンから現代まで

アーロン・スキャブランド著 岩波書店(645.6/S)

犬をどのように遇してきたかということを、西洋人の残した文献や日本の文献を通して、日本の歴史とを描いている本書は、表の歴史とは違う。特に戦争に利用された犬の章は悲しい。それ以上に現代、年間10万頭以上の犬が動物愛護センター等で殺処分されてしまう事実を指摘されている点が痛い。(N)

 

飛べない鳥たちへ : 無償無給の国際医療ボランティア「ジャパンハート」の挑戦

吉岡秀人著 風媒社(498./Y)

「海外で働く医師になる」という天啓とも言うべき志を持ってしまった一人の文系青年が、医者となり、そして世界でも最も危険な国と考えられるミャンマーに医療拠点を置き、超人的な活動している。しかも、手弁当で、だ。「飛べない鳥たち(国際活動をしたいと思いながら実行できない医師)」へのメッセージは厳しい。それでも、「飛べない鳥」たちが「飛べる鳥」に変わっていく。(N)

 

ポジャギ:韓国の包む文化

中島恵著 白水社(385.9/N)

ポジャギについて何の知識もない私が写真を見てまず思ったのは「パッチワークと同じ!」ということ。次に連想したのが高山の民俗館で見たはぎれで作った巾着袋。少しの布も無駄にせずに縫い合わせて布に仕立てる「わざ」は世界中で共通なのだろう。いったんは忘れられたこうした「わざ」が見直されている現象も(そして便乗したまがい物が出てくるのも)また世界共通のようだ。単なるブームで終わりませんように! (M)

 

きみが選んだ死刑のスイッチ

森達也著 理論社(326/M)

凶悪犯罪はふえているのだろうか-ふえている気はする。でもそれは報道のせい、統計のカラクリに操られていてそう感じるのかもしれない。そうだとしたら極悪人が多いから死刑は必要だという流れは危うい。本書は一応子ども向けとなっているためとっつきやすく見えるが、とても綿密に論を進め、自分の頭で考えることを要求している。報道や多数意見の顔をして流通している言説に対してまず疑え、と。 (M)

 

イラクで私は泣いて笑う:NGOとして、ひとりの人間として

酒井啓子編著 めこん(292.8/S)

「戦争をしていてもテロに脅かされても、人は普通に生活したい」のであり、日常は続いていく。「戦争の不幸はその物理的破壊力だけではなく、」「水と最低限の栄養と毛布を送っておけば喜ばれるに違いない、というような、『施し』の対象に、相手を貶めてしまうことだ。」と著者は言う。イラク戦争後のイラク人社会の現状を描きながら「普通の日常」を蘇らせるべき「真の援助」の本質が問われている。(A)

 

アップルパイ神話の時代:アメリカモダンな主婦の誕生

原克著 岩波書店(367.3/H)

「かつて料理や家事は家族への愛情表現でもなんでもなかった。ただ煩わしいだけのものだった」(本文)。「手作りの料理=無償の愛情」という意味づけも、実は家政婦、召使いの雇用が困難になった20世紀前半のアメリカの社会状況の中で、労働力を補完するためのからくりの産物にすぎなかったのだ。「完全なアップルパイが焼けるモダンな主婦」という押しつけの理想像が成立していく過程を当時の雑誌記事、広告などの膨大な資料から読み解いていく。(A)

 

医学探偵ジョン・スノウ:コレラとブロ-ドストリ-トの井戸の謎

サンドラ・ヘンペル著 日本評論社(498.6/H)

1831年、コレラの英国侵入当時、「澱んだ悪しき空気」が病気を広めるとする「瘴気論」が有力だった。しかしスノウは必ずしも隣人の間で病気が広がるわけではないことに注目し、「汚染された水を飲むこと」、すなわち経口感染を疑い、まさに難事件に挑む名探偵のように詳細な実地調査と予防活動を進め、ブロ-ド・ストリ-トの井戸が原因であると突き止めた「疫学の父」の話。(T)

 

グロ-バル化する医療:メディカルツ-リズムとは何か

真野俊樹著 岩波書店(498.02/M)

メディカルツ-リズムとは患者が海外旅行をして滞在先の病院で治療を受けることを指す。状況によっては、観光と医療サ-ビスをセットで販売することもある。タイ、シンガポ-ル、インドなどを例に挙げて紹介し、それによる問題も指摘している。(T)

 

長寿大国日本の虚構:外国人介護の現場を追う

出井康博著 新潮社(369.2/I)

年々高齢者の数が増え、介護士の需要が高まっているが、人が集まらない。一方、不景気で仕事を探している人は多いが介護士の希望者は少ない。この需要と供給のミスマッチを埋めるのが、外国人ということになるのだが...。しっかりした準備も構想もなく、安易に彼らに頼ってよいものか。折角希望を持って来日した人たちが失望して帰国、ということにならなければよいが。(Y)

 

子供たちはみんな表で遊んでた

堀切直人著 右文書院(384.5/H)

本書は、著者が子供時代を過ごした昭和20年代後半から30年代前半を振り返る。日本はまだ貧しかったし、今のようにゲーム機もパソコンも携帯電話もなかったけれど、子供たちは外で暗くなるまで元気に遊びまわっていた。平成生まれの若い方々も、あの時代にタイムトリップしてみませんか。(Y)