林英彦著 成甲書房 (699/H)
テレビを指弾する言葉の激しさに一瞬たじろいでしまう。しかしかつては著者自身まさに「おテレビ様」の時代の有名人、成功者であった。その後の自殺未遂、全てを断ち切ったオーストラリアの密林での18年間。この様な著者自身の体験が言葉に説得力を与えている。(A)
池谷祐二著 朝日出版社 (491.3/I)
著者によれば私たちの行動や思考のほとんどは無意識的な振る舞いであり、ゆえに「自分のことは自分が一番知っている」という思い込みは危険ですらある。つかみどころが無いと思える「魂」や「幽体離脱」すらも物理的に存在する脳からの解釈は可能らしい。まさに、「知的興奮が沸きあがる」(本の紹介文より)一冊。(A)
山田真一著 教育評論社(379.3/Y)
音楽のパワーについて語られることは多い。争いや憎しみも越える、など。時にはあまりに安易に使われているような気がすることもあるが、本書はそんな懐疑的な見方を吹き飛ばす。ベネズエラで貧しい子どもたちが非行に走らないようにと始められた音楽教室が大きく育ち、今や20万人以上の子どもたちが参加し、生きる力を与えるだけでなく、そのシステムで学んだ演奏家も続々誕生しているのだ。やはり音楽ってすごい!(M)
ウェンディ・コップ著 英治出版 (372.5/K)
教育の格差は貧困とからみあって多くの国で深刻な問題となっている。これに対してアメリカで21歳の女性がすばらしいことを思いついた。大学を卒業したばかりの人たちに全国の公立学校で2年間教師をしてもらうのだ。どこで生まれても質の高い教育が受けられるように。初めは途方もない夢のように思われたこのアイディアが大勢の子供たちの人生を変えている。本書は「信念」が社会を変革できるということを力強く語っている。(M)
サンパウロ新聞社・編 フォイル(334.4/H)
ブラジル日本移民100周年を機会に、女性が異郷の地であるブラジルでどのように家庭を支え、家族を守ってきたのかがわかる、日系人女性の生き様の記録集。(T)
エルンド・サマ-ズ-ブレムナ-著 青土社(498.3/S)
古代から人は不眠症に悩まされてきた。古くは叙事詩「ギルガメッシュ」の常に目覚めていることを特性とするギルガメッシュからはじまり、いろいろな文学に出てくる不眠について解説している。(T)
高橋ユリカ著 岩波書店(517.7/T)
本書は、八ツ場ダム、川辺川ダムの建設中止をマニフェストに掲げる民主党が政権をとる以前の、今年1月に発行されたものであるが、政権交代がなされた今、実にタイムリーな本である。計画から40年たっても完成しないダム。長年にわたって国策に翻弄されてきた地域住民の思い。地域のための本当の公共事業とは何なのかを考えさせられる。(Y)
越智道雄著 NTT出版(312.53/O)
米国史上黒人初の大統領に選出され、先頃ノーベル平和賞を受賞したバラク・オバマ氏。大統領就任式におけるアメリカ国民の熱狂振りは記憶に新しい。金融危機、経済格差、不平等など様々な問題を抱える彼の国で如何にしてオバマ大統領が誕生するに至ったか、その歴史的・文化的背景を探る。(Y)
辺見庸著 毎日新聞社 (326.4/H)
著者が、警鐘を鳴らしている。今の「社会」がなにかおかしいことを。自らの病をおして。考えること・感じること・行動することをはばかり、世間から突出しないように振舞うことが「空気が読め」て、正しいようになっている今が、実はとても恐ろしいことだと、教えてくれているのだ。(N)
石井美紀著 洛北出版 (726.1/I)
図書館の自称サブカル担当者として、この本は発注決定時より「おすすめ」にするぞと心に決めていた。現在出版界で一大ジャンルとして確立した「ボーイズラブ」の原点が、竹宮惠子・栗本薫(=中島梓)そして雑誌『JUNE』を中心に論じられ、ヴィスコンティ、ヘッセ、稲垣足穂、三島由紀夫などが、その源泉として取り上げられている。もう一度、『地獄に堕ちた勇者ども』が観たくなった。今ならどう感じるだろう。(N)