5月になると植物がいっせいに芽吹き始めます。日に日に表情を変え、褐色だったガーデンはみるみるうちに緑あふれるガーデンに変わります。この時期は、植物の生きる力が感じられます。
この時期の主なガーデン作業は宿根草の株分けになります。株分けは、ガーデナーの仕事で、もっとも重労働で大変な作業の一つです。また、株分けしたものを、植え付けていく作業も今年一年のガーデンのデザインや出来栄えに大きく左右するので重要な季節です。
真剣勝負をしているガーデナーはこの頃ちょっと目を三角にしているかもしれません。しかし、疲れた体を癒してくれるのは、やっぱりこの新緑のエネルギーなのです。
5月中旬ころのバラ園ではかわいらしい花が咲き始めます。バラの株もとに咲く青色のワスレナグサが一足先にバラ園に春をもたらします。ワスレナグサの英名はforget me not(私を忘れないで)。バラ園のワスレナグサは忘れられなくなるほど心に響くシーンを作り出します。
5月は実のなる植物の花が咲く時期です。リンゴやスモモのようなかわいらしい花から、カーラントのように目立たない花まで、約20種の果樹の花がガーデンでは見られます。
7月~8月にかけてはウメ、アンズ、グーズベリー、スモモの実が、10月~11月はリンゴ、ブドウの実が楽しめます。
5月の連休があける頃から、カッコウがとても美しい声で鳴き始めます。この鳥が鳴き始めると、もう寒の戻りの心配もなくなると言われ、地元農家の人達は田畑に苗を植え付けていきます。この土地の人達が昔から言い伝えてきた自然からの合図を私たちガーデナーも習って、カッコウの鳴き声を待ってから新しい苗をガーデンに植え付けています。
木の高い位置で鳴いているため、シルエットしか見たことはありませんが、作業中のカッコウの鳴き声はガーデナーの癒しの声です。耳を澄まして聴いてください。
写真 文 : 小澤文子、荘司真悠子