恵泉女学園大学

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人文学部 歴史文化学科

佳香

かこう、と読む。佳(よ)い香りの意。今晩のシチューに入れる月桂樹の葉から油分のシネオールが佳香をはなつ。月桂樹といえばドイツ・オペラに残るリヒャルト・シュトラウスの傑作に『ダフネ』がある。初演は1938年、ナチス政権下の悪夢の真っ只中。太陽神アポロと人間の青年ロイキッポスの二人に愛されたダフネが両方を拒んで月桂樹に身を変える。時はディオニュソス神の祭典当日。アポロとロイキッポスの対決につい気をとられがちだが、破壊の衝動を秘めた荒ぶるディオニュソスと秩序がいのちのアポロとの出会いにむしろこのオペラの鍵がある。インド・ヨーロッパ文明の壮大な時空間につながって、我が家の台所とギリシャ精神史が結ばれる。