恵泉女学園大学

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図書館

No.36 2008.4 特集「プレゼントしたい本」

2008年4月

図書館とわたし-パトロンとして 木村 利人

図書館と私-パトロンとして
木村 利人 大学学長

僕は、子どもの頃から本が大好きでした。
幼稚園時代には、『キンダーブック』というこどもの絵本をよく見ていましたし、小学生時代に読んだ『アルス児童文庫』では『地震の話』に津波のことが書い てあったのが印象に残っています。その頃、わが家には、たしかラングという人が書いた『ブルー・フェアリー・ブック』という英語の童話集があって、もちろ ん英語はわからないので、その繊細なペン画風の挿絵を眺めていたことが記憶に残っています。
戦時中は、山梨県のお寺に集団疎開をしていましたが、本堂の片隅に本棚がありました。そこには、大百科事典や大言海、植物・動物・鉱物図鑑、世界と日本 の童話集などの本が置いてあり、学級文庫のようになっていたので良く読んでいました。改造社から出ていた現代日本文学全集の中の『新聞文学集』は、小学生 だった僕には大分難しかったのですが読み終えました。
終戦後、中学に入ったのですが、学校の図書室には本はあまりなかったので、毎日学校のすぐ近くの九段下にあった私立「大橋図書館」に通いました。予習や 復習のための参考書はもちろん、読みたいと思っていた文学や歴史書の殆どが揃っている、戦前からあった大きな図書館(閉架式)でした。館外貸し出しは一切 できませんでしたので、閉館時間ギリギリまで粘って本をしっかりと読み終えました。この頃にリヒト式「超速読」(?)の習慣がついたのだと思います。

大学院を終えてから、タイのチュラロンコン大学で約4年、ベトナムのサイゴン大学で2年、スイスのジュネーブ大学大学院で3年、ハーバード大学で 2年、ジョージタウン大学で20年と、海外各地で教育と研究に従事してきましたが、何処にいても図書館が研究生活の中心でした。図書館の大きな机の上に何 冊も広げて講義の準備や研究をするのは楽しいことです。
ハーバード大学のサイエンス・ライブラリーは24時間休みなしに開館していて、驚きました。ワイドナー・ライブラリーという一千万冊以上の蔵書のある大 学図書館に最初に行った時、閲覧室入り口には札が下がっていて、「スタッフ用入り口」と「パトロン用入り口」と書いてあったので、何となく戸惑いました。
「パトロン」とは、要するに「後援者」と言う意味でカタカナでもそのまま使われています。本を読みに図書館を訪れる人は、学生も教員も日本では「閲覧者」 ですが、アメリカでは「パトロン」という表現であることに感銘しました。地元の公共図書館でも、市民は図書館の「パトロン」なのです。
それと、読みたい本を何冊でも借りられることにも驚きました。大きなバッグに何冊も本を詰め込んでいる学生たちを良く目にしました。
僕は、素晴らしいスタッフの方々と多くの良書に恵まれているこの恵泉女学園大学の図書館が大好きですので、よく本を借りに行きます。
パトロン(学生、教職員)の皆さん、もし僕を見かけたら(書棚のところを歩いて回っていることもありますし)遠慮しないで声をかけてみて下さい。但し小さな声でお願いします。

特集 プレゼントしたい本

「さよならをいうための本」 宮嶋侑梨薫 人文学部 文化学科4年

さて、私に本を贈ってくれたある人の話をしよう。彼女は、自分という人間の色をよく知っている人だった。自分と他の人との間の、眼には見えないある種の壁ともいうべき境界線の存在をはっきりと自覚している人だった。そんな彼女に惹かれ、同時に嫌悪を抱きながらも共に過ごしたある年の夏の話をしよう。
大学1年生の頃である。夏休みの一ヶ月間を利用して、私はリゾート地でアルバイトをする計画を立てていた。実際に行ったのは二週間と少し、栃木県の那須塩原だからそれほど遠いとは言えないが、それでもあの頃の私にはちょっとした冒険だった。そのとき、同じく県外からアルバイトに来ていたのが、彼女だった。
色は白く、やわらかな曲線と微笑みをもっていて、同じ年なのになんだか大人の女を相手にしているような、そんな印象を人に与える子だった。考え方も大人びていた。高校生の頃から海外に留学したり一人で旅をしたり、アクティヴに行動しているせいかもしれない。たとえば、生き方に対する価値観や姿勢の違いから彼女と誰かの衝突が起こったとしても、次の日には何事もなかったかのようにその誰かと親しげに会話をしている。たとえば、陰で悪態をつき嫌っている異性ともにこやかに話をする。私が「もう仲直りしたの?」と聞くと「してない。だけどいつまでもいがみあっていても仕方がないじゃない」と答え、「あの人のこと嫌いなんじゃないの?」と聞けば「嫌いだよ。でも一ヶ月間だけの付き合いなんだから」と答える。他人の価値観は絶対に変えることはできない。人と人は歩み寄ることはできるけれど、重なり合うことはできない。絶対に。それが彼女のスタンスだった。少なくとも、私にとっての彼女は。そして、あの頃の私には、そんな彼女の振る舞いが理解できなかった。理解できないものに対し、人は大別して三つの態度をとる。拒絶か、無視か、傍観か。私が選んだのは拒絶だった。
一ヶ月も経たない内に帰ることになった私を引きとめ「ねえ、なにがいやなの。一ヶ月しか一緒にいないんだから、仲良くしたほうが楽しく終われるじゃない」と言った彼女に、「私はあなたみたいに割り切ることはできないし、したたかにもなれない」と返した。分かりあえないことをそのままにせず、分かりあえるまでとことん言葉を尽くす。それがまともなことだと信じていた私にとって、彼女の人に対する距離のとり方はあまりにも醒めていた。そうして、出発の日の前日の夜、渡されたのが一冊の本だった。江國香織の『神様のボート』。旅を続ける母と娘の物語。あんまりにも贈られる本の内容にふさわしくて、少しかなしい気持ちになった。
誰かに本を贈るときは、別れのときがいいのかもしれない。もう二度と会えないかもしれない相手に、今まで伝えきれなかった想いや、なにかを、本に託すことで伝えられるかもしれないから。贈りたい本・贈られたい本というのは、そのときの気持ちからおのずと決まってくるものなのだろう。彼女とはおそらく、もう会うことはない。だが、一冊の本によって結ばれたあの夏のひと時は、今も私のなかに深く重く刻みこまれている。

人に贈りたい本 『星の王子さま』 (アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ著) トミカワ マイザ ケイコ キクチ 人文学部 日本語日本文化学科2年

本を贈るということは、自分の価値観を代弁してもらうことだ。その価値観をすでに持っていたか、本を読んだ後に得たものかは前後すると思うが、本を贈ることは価値観の共有を意味する。
そのことを深く感じたのは、若きころの父が、母に贈った『星の王子さま』と出会ったときのことだ。本の背表紙には父のメッセージが書き添えられていた。両親の間の秘密を知ってしまったかのような、照れくさい気持ちになったのをよく覚えている。しかし、本を読み終えた後、父がこの本から伝えたかったことを理解し、背表紙のメッセージがじんわりと胸に沁みていくのがわかった。おそらく、母も同じことを感じたのに違いない。そう思うと、よりいっそう嬉しい気持ちになった。
それ以来、大切な人へ贈る1冊として、まず『星の王子さま』を思い浮かべるようになった。この短い物語は、人間の心、もっとも純粋な心を描いている気がする。普段は、なかなか言葉にできないような、でも常に胸のうちにある気持ちが、素朴な言葉で書かれている。  私が言いたいことは、『星の王子さま』を読めば、理解してもらえるだろう。だから、この文を背表紙のメッセージの代わりとして、今あなたに贈りたい。忘れられない1冊になることは、100%保証しよう。まだ知らぬあなたと私との間で、共通の「なにか」が生まれ、その「なにか」がさらに広がっていくことを願って・・・。

マイライブラリを使いこなそう!

☆カウンターでよく訊かれる、5つの質問。
1.「私、今何冊借りてますか?」あるいは、「あと何冊借りられますか?」
2.「返却遅れている本ありませんか?」あるいは「返し忘れている本ありませんか?」
3.「罰則かかってるはずなんですけど、いつまでですか?」
4.「私が予約した本、まだ返ってませんか?」
5.「前に借りた本の題名が知りたいんですけど・・・。」

こんな時、マイライブラリに登録してあれば、自宅からでも、大学内でも、図書館ホームページにアクセスして自分で確認できます。まずは、図書館カウンターへマイライブラリ登録申込書を出して下さい。マイライブラリ登録申込書は、新入生には、図書館ツアーの時にお渡しします。このほか、図書館内の新聞架の上にも置いてありますので、こちらを利用してもいいですよ。登録すると、次の日(次の日が休みの場合はその翌日)から利用できるようになります。

☆マイライブラリの使い方(本学学生の場合)
泉女学園大学図書館ホームページの蔵書検索(OPAC)にまずアクセス。蔵書検索の画面右上と右下にある「マイライブラリ」の文字をクリックして下さい。ログイン画面が表示されるので、利用者IDに「k+学籍番号(注:アルファベットは小文字で)」を、パスワードは初めての時には登録の際申請した仮パスワードを 入力します。すると、学生個人のページが開きます。これで上記の質問1.から4.までは、その場でわかります。5.については、少々テクニックが必要で、 本を借りたら自動的にリストができるわけではなく、自分でブックリストを作っていくのです。ブックリスト(マイフォルダという名前です)の作り方は、次回 「マイフォルダの使い方」にて説明します。 最初のログイン時に、パスワードを学内ネット用のパスワードに変更して下さい。そうすれば、学内ネットにアクセスするのと同じようにログインして、あなたの図書館利用状況を確認できるようになります。あ、最後はログアウトを、忘れずに!(N)

いんふぉめいしょん 編集後記

貸出し冊数が増えました!
4月から学生の図書の貸出冊数が以下のように増えました。貸出期間は今まで通りです。
1年から3年まで 6冊 →10冊 (2週間)
4年生 10冊→15冊 (1カ月)

雑誌

  • 終刊 『現代コリア』

図書館ホームページがリニューアルされました
これまでの「学内ホームページ」が「公式ホームページ」に統合される形で図書館ホームページは一つになりました。今まで学内ホームページでしか見られなかった「お すすめ本」「指定書」「図書館報」などのコーナーもこれからは同じ画面から見ることができます。どんどんアクセスしてください。

編集後記

今日はと言うより今、卒業式が進行中です。新入生の皆さん、4年間は早いですよ(A)