2007年10月
『エレメンタリ憲法』
菊地牧恵 園芸準備室
今年の夏休みに、私は他大学で「日本国憲法」という科目の短期集中授業を受ける機会がありました。『エレメンタリ憲法』という本がテキストでした。「エレ メンタリ」とは「基本的、初歩的」という意味です。憲法の本はすごく難しくて、読みながら寝てしまうのではないか...授業は午後だし眠くなってしまうので は...と心配していたのですが、これが意外と面白かったので、今回お薦めしたいと思いました。
驚いたのは、世界的に見て日本国憲法は、古い方から数えて14番目ということでした。しかも1946年に制定されてから、一度も改正されていません。「憲 法改正」というと、私は9条のことばかり頭に浮かんでいましたが、103条まである日本国憲法、一度くらい見直した方がいいかも、と思うようになりました (改悪には反対しなければなりませんが)。ちなみに 、日本国憲法より古い13番目までの国の憲法は全て、1回以上改正されています(多いところは139回も!)。日本のケースは異例なんですね。
充実していたのは「戦争の放棄」の章です。日本の政府は、自衛のための実力は戦力とは言わず、9条はその保持まで禁止したものではないと解釈しています。 しかし、平和を実現するために、憲法上許されるのはどんな方法なのか、学説も判例も見解は一致していません。
なぜ9条は、様々に解釈されるような文章になったのか?まるでミステリーを読んでいるかのような『エレメンタリ憲法』、お薦めです!
*『エレメンタリ憲法』は図書館にあります。
つい先日、映画館にて「新世紀エヴァンゲリオン 序」を観てきた。コマーシャルでは宇多田ヒカルの主題歌と共にあの劇場版の予告がばんばん流れるし、身近 な知人たちは口を開けばエヴァの話をするし(......と、いうのはちょっと大げさですが)、今までアニメもろくに見てこなかった私としても、これはいっちょや らいでか!という気持ちになったわけである。なので、ひとまずビデオ屋さんでアニメ版・エヴァのDVD vol.1を借り、前日にどしどし観て、それから本編を鑑賞してきた。
......あれですね、内容の詳細はこれからご覧になる方もいるだろうから特に触れないけれど、一言でいうと「間違い探し」をしているような気分でした。四部 作のうちの第一部ということもあって、アニメ版を映画用にうまくもってきたというような感じ。もちろん、迫力もあったし確かにあの作品は何度観ても面白い のだけど、前日にDVDを借りたこともあり内容は鮮明に覚えていたから「あ、この場面はカットしたのか」「ああ、ここは青少年への影響を考えてこういう風 に変えたのね」と、苦笑いしながら鑑賞した。とはいえ、作品そのもののもつ力には相当なものが感じられ、生きるということについて考えずにいられない作品 のひとつには違いないと思う。生きるというのは、ただ生きるのでなく、どう生きるか、ということだけれど。自分がなにと戦い、なんの為に戦うのか。どう生 きたいのか。少なくとも- 世界中にさまざまな困難を抱えている人はいるけれども-謎の怪物たちが人類絶滅を狙い襲いかかってこないこの世界に生きているだけでも、しあわせになり易 いと言えるのかもしれない。しあわせとはなにか、について考えだすとまたややこしくなってしまうのだけれど。
それにしても、新世紀があんな風だったらいやだなぁ......。
わたしは素直に読む人だと自称している。はっきり言ってつまらなければ安眠用にしちゃうし、すぐ眉間にしわ寄せちゃうし。「あー」とか「マジでぇ」って言葉に出しちゃうし。
そんなあたしは、結構「いっちゃってる」的描写をする小説が好きだったりする。エロいシーンも人が息絶えていくシーンも、そこまで書かなくてもいいじゃ ん!ってくらいの細かい解説をやってくれる人が大好きだったりするわけ。そんなあたしの欲を満たしてくれる作家さんの作品はとりあえず読んで読んで読みま くる。
たくさん好きな小説家がいる中で、あたしが「ヤバいよ、この人!」の一言で友人に貸せるものを書く人がいる。今回は彼の作品の中からひとつ、選んで紹介しよう。
それは新堂冬樹の「鬼子(おにご)」。売れない純愛小説家の崩れた家庭が舞台。10年以上、書く小説のすべてがフランスでのメロドラマという金字塔を打 ち立てる彼は、実母の死後、非行に走り出した息子、抜け殻のような態度で嫌に他人行儀の妻に悩んでいた。唯一、彼の作品のよき理解者であり、アドバイザー となってくれるのは一人娘。彼は、彼女を支えに、いつか自分の小説が認められるもの、と信じてやまなかった。
だが、ある日を境に歯車が狂いだしていく。近所の犬が惨殺され、愛娘はレイプを苦に自殺、妻からは意味不明の言葉を投げつけられ・・。これでもか、とい うほどの惨劇が繰り広げられるのだが、どうにも筋が通らない。主人公は不貞の息子にその理由を求めていくが、実はその息子が最後に残した手紙に真実があっ た。
ほんとにショックだった。あたしはこの人を舐めてたんじゃないかと思うくらいすごい小説に出会ってしまった。はっきり言ってここまで書いて後悔している。なんでって略しすぎてあたしの力じゃその面白さの1割も伝えられないと分かってるから。
目を伏せたくなるほどのシーンがあるけど、やっぱり恋愛小説にない現実味がある。
はっきり言ってこれだけ黒い小説を書ける人はいないんじゃないかな。
毒がある女を目指す貴方!晩秋に一冊、読んでみようか。
学生アルバイトの皆さんへのひとことアンケート
★これまでに「わたしを裏切った」本、映画、マンガなど具体的にどうぞ!
瀬崎茜 人文学部 文化学科2年
作品名:明日の記憶 (萩原浩著)
ジャンル:小説
理由:
映画がとても話題になったのですが、私は、図書室で借りて夢中になりました。期待以上にアルツハイマー患者の心理描写がされていました。ページをめくるごとに涙が出てくる作品です。
村上由貴 人文学部 文化学科2年
作品名:蟲師
ジャンル:映画(大友克洋監督 オダギリジョー主演)
理由:
映像はきれいだったけれど、ストーリーがわかりづらかった。
トミカワ マイザ ケイコ キクチ 人文学部 日本語日本文化学科1年
作品名:姑獲鳥(うぶめ)の夏(京極夏彦著)
ジャンル:小説
理由:
私はホラーやミステリー小説を読まず嫌いしていました。ですが、この夏なんとなくこの本を読んでみようと思いました。怪奇ミステリーと聞くと、幽霊や妖怪 を思い浮かべます。ですが、読み進めていくと、「あれあれ?面白いぞ!?」と思う瞬間が沢山ありました。600頁もの大長編をたった1日で読み終えてしま うほど。"犯人"を推理しながら読んでみましたが、何度も裏切られました。ラストを予想できる人は、果たして存在するのでしょうか・・・。とことん裏切ら れてみたい人にオススメの一冊です。
(ちなみに、この本を読んでからというもの、ミステリーばかり読んでいる私がいます・・・。)
◆ 雑誌・新聞
◆ 新聞新規購入 Le Monde diplomatique 2005.7-
◆ 書架を増設しました
夏休み中に地階の階段周りに書架を増設し、いままで1階にあった図書の一部をそこ へ移動しました。対象になる図書は分類番号000~089(総記)、100~109(哲学)の 図書です。
「私を裏切った本」、いかがでしたか。買い損なった本はこころもお財布も寒い・・・。でも図書館で借りるなら大丈夫。何度でもトライしましょう。原稿、アンケートの急な依頼を快くひきうけて下さった皆さんありがとうございました。!(A)