恵泉女学園大学

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学生生活

リービ英雄氏講演会「越境する言葉と文化」

開催日 2008年5月24日(土)午後15時~16時00分
(恵泉スプリングフェスティバル2008内)
会場 恵泉女学園大学J202教室
アクセス 京王、小田急多摩センター駅(新宿より約30分)
専用バスによる大学への無料送迎があります。 交通案内はこちらをご覧ください。
入場 無料
申し込み 不要
問い合わせ先 恵泉女学園大学スプリングフェスティバル実行委員会事務局  042-376-8211(代)

 

リービ英雄(りーび・ひでお)

リービ英雄(りーび・ひでお)西洋出身者として初めての現代日本文学作家。1950年、アメリカ生まれ。外交官の父とともに5歳で台北、6歳で台中、11歳で香港に移り住む。その後ふ たたびアメリカを経由し、1967年にはじめて日本に移住。日米往還をくり返し、その間にプリンストン大学大学院博士課程修了、プリンストン大学、スタン フォード大学で日本文学を講ずる。1982年、「万葉集」の英訳により全米図書賞を受賞。スタンフォード大学の教授職を40歳直前に辞して、東京に定住。 以降、日本語による作家として活躍。1992年、アメリカ人の家出少年をあつかった『星条旗の聞こえない部屋』によってデビューし、同作で第14回野間文 芸新人賞を受賞。また、1996年刊行の『天安門』は、終戦から半世紀ぶりに中国大陸を同時代的に描いた日本文学として話題をよんだ。他の作品に『日本語 を書く部屋』『我的中国』『英語でよむ万葉集』(以上岩波書店)、『日本語の勝利』『国民のうた』『ヘンリーたけしウィツキーの夏の紀行』『新宿の万葉 集』『最後の国境への旅』など。〈9・11〉を描いた小説『千々にくだけて』(2005年)は、第32回大佛次郎賞を受賞した。世界に類を見ない、西洋世 界から非西洋世界・言語へと越境したワールド・フィクションの書き手である。 (岩波書店『越境の声』(2007年)著者肩書きより)

リービ英雄氏を恵泉女学園大学スプリングフェスティバル講演講師にお招きするにあたって

彫りの深いお顔立ちのリービ秀雄氏の口からなめらかな日本語が流れ出すとき、彼のペン先から漢字とかな文字がつづられるとき、私は何か落ち着かない気分にさせられる。アメリカ生まれのリービ氏は、スタンフォード大学等での日本(文)学研究者時代を経て四十代から日本に常住、日本語で執筆・講演活動をこなす日本語作家になった。出身地の文化や言葉はその人固有の属性としてしみつきアイデンティティの核となるものと思い込んでいる者に、言語と文化を軽やかに越境するリービ氏の姿は、心地よい混乱をもたらしてくれるのだ。
日本語を自分の言葉としていることが国籍も出身地も保証しないとすれば、「私」とはいったい何者なのか――リービ氏の存在と言葉は、こうして「私」の思考にも「越境」を迫る。日本人が日本語で書いたものだとの思いこみの中に閉塞しがちだった日本文学も、彼ら越境の書き手によってゆさぶられ、その国籍や第一言語を選ばぬ「日本語文学」という用語も生まれた。「越境」は伝播し共振するのだ。
このたびも、「越境」の喜びと痛みを語るリービ氏の言葉が、私たちの「あたりまえ」をもっと揺るがしてくださるように、これから広い世界をめざす若い学生たちに、「越境」の勇気を与えてくださるように願ってやまない。

篠崎美生子・恵泉女学園大学准教授(日本文学)