2005年10月
1997年に「踊る大捜査線」の放映がはじまると、瞬く間にファンになってしまった。1961年の「七人の刑事」以来、1972年の「太陽にほえろ」、 1979年の「西部警察」など多くの刑事ものは、事件の謎解き、犯人や犯罪の社会的背景の紹介、そして近年では派手なアクションを売りにしてきた。こうし た要素に加え、「踊る大捜査線」には、さらに新たな要素が加わった。所轄警察署である「湾岸署」と本部 ・警視庁の関係に代表される警察内部の官僚機構の存在、その上下関係に翻弄される警察官の人間性である。「事件は現場ではなく会議室で起きている」という このシリーズによく登場する名科白がこれを象徴している。従来の刑事・警察ドラマでは、警部補、警部、警視、管理官などこうした官僚機構をめぐる葛藤部分 がなぜかまったくといっていいほど描かれてこなかった。一枚岩の警察、巡査や刑事が警察官であるという思い込みが植え付けられてきたせいかもしれない。
しかし、「踊る大捜査線」の例に見られるように、僕らが生活している社会は、膨大で多様な社会機構で構成されているが、なかなかその構造を知る機会は多く ない。もちろん、構造を知ること自体に意味があることは少ないが、何かの問題を解くには構造の理解は重要なその前提である。 通勤電車の中での「すきま 時間」をどう有効に使うかは、いくつかの方法があるだろう。集中力が目覚めていないので、内容のある重いものはもちろん敬遠される。英会話や音楽を聴く、 新聞や漫画を読む、ゲームをするあるいはやはり仮眠を取るなどである。僕の利用法のひとつは、社会派のミステリー小説を読むことである。 ここで紹介する高野和明の『13階段』(講談社文庫)は、 2001年に第47回江戸川乱歩賞を受賞した作品で、主人公は、出所したばかりの前科を背負った青年 ・三上純一と松山刑務所刑務官 ・南郷正二。この二人が、犯行時の記憶を失いながら無実を主張する死刑囚・樹原亮の冤罪を晴らすために奔走する。 しかし、冤罪捜査の依頼には成功報酬 1000万円を支払うという謎の依頼人があり、 また、 死刑執行までの時間はわずか3ヶ月しかない。唯一の手がかりは被告の記憶におぼろげに残る「13階段」。
推理を追いながら、小説では、法務大臣による死刑執行に関する手続きや死刑囚と接する刑務官の苦悩と現実などから、 死刑制度に関する知識をより具体的な形で得ることもできるだろう。 また、この小説でキーワードになるのは「保護司」と呼ばれる日本独特の司法制度に従事する人々だ。 刑務所や少年院を出た人たちの社会復帰を保護観察所の保護観察官とともに手助けする非常勤の国家公務員で、保護司法に基づき現在約5万人が活動している。 人権擁護委員などと同様に、高齢化が進んできたため、 76 歳以上に再委嘱しないと法務省が決したのは、つい最近の2004年のことだ。謎解きを楽しみながら、こうした社会のさまざまな構造を学ぶのも、すきま時間 の使い方だろう。(この小説は、反町隆史、山崎努主演で2003年に映画化され、2005年にはDVD化された。但し、まず映画よりも小説の一読を推薦し たい。)
中・高・大学、と自慢じゃないけど長距離通学。電車に乗ってる時間が片道20分、を切った試しがない。そんな環境だったから、制服コートのポケットに、ダウンジャンバーのポケットに、と文庫本を押し入れて歩くクセがついたのだろう。
さくさく読める感じの詩集を入れておいて、共感できたところで、はぁ~とため息ついちゃったり、ミステリー系小説を忍ばせて「えっ次どうなっちゃうのよ」 とハラハラしつつ、電車を降りなきゃいけなかったり。ドラえもんのポケット級に便利で、たくさんの色を放つ感情を与えてくれる。
ちょっと前、までは絶対的なハードカバー主義で、どうしても、という場合程度でしか文庫コーナーに足を踏み入れる、なんてことはなかった。それが一転した のは、やはりお気に入りのジャンバーについたポケットに一冊差し込んでみて「ぴったりじゃん・・・!」と気づいた瞬間からだ。
嗚呼、今年もきっと、風が白く刃のようになるころ、私はその罪なジャンバーの両ポケットに文庫本を入れて歩くのだろう。
『チーズはどこへ消えた?』は、ある迷路で起こった出来事をめぐる物語です。このチーズとは私たちが毎日の生活の中で探し求めているものを 指します。この物語に登場するのは、二人の小人「ヘム」と「ホー」と二匹のネズミ「スニッフ」と「スカリー」の四つのキャラクターがいます。私たちみんな が持っている単純さと複雑さを象徴しています。読み進めていくうちに自分はどのキャラクターの行動と似ていて、なりたいキャラクターが分かってくると、ど んどん続きが気になってくると思います。そこがこの物語の面白いところだと思います。
私も本書を読むまで、変化とは何かを失うこと、今、起こっている事に目をつぶってしまって変わることに恐れていたヘムのようだと思いました。しかし、ネズ ミたちのスニッフとスカリーは、起こった事態をどこまでも分析しようとして、物事を複雑にしたりすることはせず、つねにシンプルだと思いました。
この話では、"最大の障害は自分自身の中にあり、自分が変わろうとしなければ好転しないのだ"ということを教えてくれました。何か困った時やどちらか一 つに選ばないといけない時など私はよく『チーズはどこへ消えた?』を思い出し、頭の中を柔軟にします。すると必ず良い答えが発見できるように感じます。人 と待ち合わせしている時や電車の中でも読めると思いますので、ぜひお薦めしたいと思い、この本を選びました。
図書館の利用指導の終了時には、学生の皆さんに感想のアンケートを書いてもらっています。今回はその「自由回答の欄」に書いていただいた図書館への質問・要望にずばり(?)司書がお答えします。
☆→図書館への質問・要望 ★→図書館からの答え
☆文庫本をふやして!
「文庫本をいつもたのしませてもらっています。数を増やしていただけないでしょうか。」
「文庫本が足りません・・・。」「文庫本を新しくばんばんいれてほしい。」
★研究のための資料の収集・提供を仕事とする大学図書館としては文庫本を積極的に入れることは、むずかしいのです、とこれは紋切り型回答。でも重たい単行 本より手軽な文庫本の方が読書は進みますよね。私もそうです。みなさんにはもっともっと本を読んでもらいたいし-これがホンネ。このジレンマをどう解決す るか?→いろいろな制約から、購入して増やすことができないので、個人の方からの寄贈に頼ったり、年1回くらい書店からの寄贈のあるときにみなさんの好き そうなものを選ぶようにしています。あまりはっきりとしたお答えでなくてごめんなさい。
☆リクエストのこと
「リクエストした本が早く読みたいです。」
「本やDVD・ビデオ等のリクエストは直接言えばいいのですか?」
★こんな本を読みたい、授業に必要、などなど欲しい本があったらカウンターにある注文票に記入してリクエストをしてください。上でも書いたように「大学図 書館」なので、その目的からあまりにはずれてしまうようなものは購入できないこともありますが、できるだけみなさんのご希望にそいたいと思っています。リ クエスト本は大至急で注文を出し、大至急で受入れ処理をしています(何といっても読みたいときが旬!)。ビデオについては年2回くらいの選定なので本のよ うにはいきませんが、みんなに見てもらいたいと思うようなタイトルがあったらぜひ教えてください。
☆もっと快適に!
「もう少し個別に自習できる机が増えれば良いなと思いました。」
「奥の自習室(第二閲覧室)で、私語が目立つことがあり、ゆっくりできないことがある。」
「ブースの自習についてなのですが、私語禁止にして下さい。うるさい人がけっこういます。」
★おしゃべりは頭の痛い問題ですね。スタッフも見回るようにはしているのですが、その時は静かだったり、小さい声だとおしゃべりなのか勉強のことを話し 合っているのかわからず注意しにくいということもあります。でもどんな内容であってもずっとひそひそ声がしていると気になりますよね。大学の図書館は勉強 をするところなので、たとえ小声でもおしゃべりは必要最小限にしましょう。それから図書館では飲食は禁止です。これから暖房のはいる季節になると、も わ~~とした空気の中に揚げ物のにおいなどが強烈に(!)残るのですよ。ゴキブリなどは冬でもけっこう元気ですし・・・。水分の補給も図書館の外でお願い します。
みんなで気持ちのよい空間をつくりましょう!!
☆質問してもいいのかな?
「どうしても図書館は近づきがたいイメージがある。質問してもいいのかな?とか・・・。でもこれからは使いたいと思う。」
★何か聞きたいことがあってもカウンターの人は忙しそうだったり、下を向いていると話しかけにくい-と思う方も多いかもしれませんね。そんな遠慮は無用で す。カウンターの人(交代で担当します)はいつも顔をあげてみなさんを眺めているわけにはいかないので、いろんな仕事をしているため、下を向いていたり、 コンピュータに向かっていたりします。そんな私たちに「振り向いて!」「こっちを見て!」と、声をかけてください。スタッフはみなさんを見ていないようで も実はからだ全体を目にして(ちょっとおおげさ)常に気を配っている、つもりです。
◆ 雑誌・新聞
◆ 新聞新規購入 Le Monde diplomatique 2005.7-
◆ 新しい掲示板が設置されました。
図書館の自動扉前の掲示板が新しくなりました。リクエスト、予約の本のお知らせ、投書への回答などがこの掲示板に貼られますのでご覧ください。
前号に引き続き今回も原稿ありがとうございます!寄稿の常連さん大歓迎です。(A)