恵泉女学園大学

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本学について

2009年3月

卒業生の皆さん、ご卒業本当におめでとうございます。
卒業生のお父様、お母さまそしてご家族の方々、保証人、今日ここにおられる関係者の皆さん方にも心からお祝いを申し上げます。
卒業生の皆さん方は、ご両親はじめ色々な方々の、愛と献身的なご援助により今日の日を迎えられた大きな喜びを、感謝のうちにいつまでも覚えていてくださることと思います。
今年は、昨年来の金融恐慌の大きな嵐が吹き荒れています。実は、ちょうど今から80年前も、ある意味で、現在と類似している世界経済大恐慌のただ中でしたが、その年に、恵泉女学園は、河井道先生というクリスチャンの女性によって創立されました。
先生のキリスト教信仰に基づき、聖書、国際と園芸の教科を学ぶことを教育の理念とする学園を創設しようと決意した時、多くの人々が反対しました。お金がない、土地がない、校舎もない、すでにキリスト教系の女子ミッションスクールが、かなりあるのにどうして今さら学校をつくろうとするのかといってやめさせようとしたのでした。しかし、河井道先生はこの理念によって、学園を創立したのです。皆さん方がこの大学で4年間学んだユニークな女子教育、キリストにある真の人格の形成と、人間の解放こそが、平和を目指す新しい時代の国際的視野をもった女性にふさわしいとする教育をはじめたのでした。そして、恵泉女学園は戦前、戦中、戦後と80年の歴史を積み重ね、昨年には大学も開学20周年の記念すべき年を迎えたのでした。
私は、この本学園創立者である河井道先生から教会の日曜学校で直接お話をお伺いし、大きな影響を受けた当時の生徒の一人として、今日皆さん方の前でお話しできることを大変に嬉しく思います。
今日お読みしました聖書の箇所にはこう書いてあります。「すべては、あなたがたのものです。パウロもアポロもケファも、世界も生も死も、今起こっていることも将来起こることも。一切はあなたがたのもの、あなたがたはキリストのもの、キリストは神のものなのです。(コリントの信徒への手紙一 3章21-23節)」この個所は、河井先生が1935年の「恵泉」という学園のニュースレターで引用されておられるのです。実は、私もバイオエシックス(生命倫理)という専門の立場から、この箇所をしばしば引用していましたので、河井先生のコメントを読んで大いに共感するところがありました。「コリントの信徒への手紙」の筆者であるパウロとは、世界も生も、死も、現在も、未来も「あなた方のもの」なのですとはっきりと説いています。それは、すべてが、「わたくしたちのもの」ということを意味していますので、まさにバイオエシックスでいう「自己決定の原理」の根拠となる表現です。河井先生は、学生たちにしばしば言われました。「「はい」と「いいえ」をはっきりいいましょう」と。誰に反対されても批判されても、正しいと信じたことを貫き通すわたくしたち自身の自己決定の「勇気」を持ちなさいと語られました。その勇気を恵泉で養った女性たち、皆さん方の先輩は日本だけでなく、世界の各地で幅広く活躍しています。
さて、河井先生のコメントと私のコメントとは一部重なるのですが、「聖パウロは、万物は汝らのものなりと言いて、汝らは、キリストのものキリストは神のものなりと結んだ」と書いておられます。
私の解釈では、徹底的な「自己決定」をするべく導かれている主体としての自己が、このパウロの表現によれば、どんでん返しにあって、「あなた方は」、キリストのもの、キリストは神のものとなってしまうというこの信仰的表現は、神にあっての自己決定、つまりわたくしたちキリスト者の生命倫理的自己決定は自分中心のわがままな、エゴイステイックな自己決定とはなり得ないことを示しているのです。
自分らしい、悔いのない豊かないのちを生き育てるためには、しっかりとした神にある自己決定というルーツがなくてはなりません、そのルーツを多くの皆さん方が恵泉の4年間で学んで下さったことは本当に嬉しいことです。昨日の卒業礼拝でも、率直で印象深い皆さん方の感話を聞き、私はこのことを含め多くのことを教えられ大変に感動しました。
本当に、皆さん方はこの4年間で大きく成長しました。私が、担当している「現代社会とキリスト教」でキリスト教と生命倫理を受講した皆さんも無事に卒業式を迎えました。図書館や情報センターをフルに利用した熱心な皆さん方の勉強ぶりが反映され、素晴らしい内容の最終レポートになったのはとても嬉しいことでした。
丁度皆さんが在学中に、本学は、日本の多くの国公私立大学からの申請に勝ち抜いて文部科学省による「特色ある大学教育支援プログラム」に選定されました。2006年度は「体験学習」、2007年度は「生活園芸」と2年連続で大学改革等推進費を獲得するという快挙をなし遂げました。これも、ひとえに常に学問・教育研究の第一線にある優れた教職員の献身的努力の成果であり、そして、素晴らしい学生の皆さんのこれらの教育プログラムへの参加の成果であったのだと思います。その他、さまざまな恵泉での尽きない一つ一つの出来事、暖かい友情をつちかった仲間たち、親しくご指導頂いた先生方や職員との出会い、等々は一生忘れられない思い出になったことと思います。
どうか、この「恵みの泉」である恵泉で、人生の最も大事な4年間の大学教育を受けたことを誇りにして、豊かないのちを生きてください。これからも、どうぞ遠慮なく母校である大学に同窓生の一人として帰ってきて下さい。わたくしたち教職員一同皆さん方をいつでも大歓迎します。
皆さん方は、多くの人に愛されて今まで過してきました。そして、神によって愛されていることをここ恵泉で知りました。
河井先生は、卒業式で、かつて次のように言われました。
「あなた方は、私の手紙です。あなた方は恵泉の手紙です。恵泉と言うのはどういう言う学校か、知りたかったら、この卒業生を見て下さい。そういう手紙として、私は皆さんを社会に送り出す」と語られました。
わたくしもまた、河井先生にならって、皆さん方をこの恵泉女学園大学からの手紙として、社会に送り出したいと思います。
皆さん、ご卒業、本当におめでとうございました。
今日から始まる皆さんがたの人生の歩みの上に、神様の御祝福が豊かにありますように心からお祈り致します。
(2009年3月19日・卒業式式辞・要旨)

卒業式
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