恵泉女学園大学

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本学について

2007年7月

新しい希望に燃えて始まった新学期も一段落し、いよいよ夏休みです。
本学の様々な海外体験学習(FS)が展開される時を迎えました。
また、海に山に、楽しい時を過ごす計画をしたり、就職活動で忙しくしたり、夏期学校や講習などで勉学などに励む人もおられることでしょう。
私は、学長業務で多忙なのですが、今学期には「現代社会とキリスト教」の科目を担当し、約80人の皆さん方と「いのち」と「キリスト教」に焦点を合わせて、講義を16回行いました。
毎週の講義をはじめ、グループ討論やビデオ教材での事例研究、例えば臓器移植など「いのち」の価値判断をめぐってのストーリーを展開や、新聞等マスメディアに現れたバイオエシックス関連ニュースについての週間レポート作成、安楽死問題の世界的権威であるジョージタウン大学ジョン・キオン教授の特別講義も行われました。それに加えて、講義を聞いたり、ビデオを見て疑問に思った事項のミニ・レポートを学生自身が調べて提出したりしました。また、ブックレポートとして、入手し易い古典文庫の中からミルの「自由論」、トルストイの「イワン・イリイチの死」、ハックスレイの「素晴らしい新世界」、イェリングの「権利のための闘争」をとりあげ、全員がそれを読んで、バイオエシックスの視座からのコメントを提出しました。ともかく学生諸君は、これらの課題にこたえて一生懸命に勉強しました。
1年生から4年生までのクラスでしたが、レポート課題もふまえての毎時間の真剣な討議で教室は活気付いていましたし、受講生の皆さんの積極的な学習態度や問題提起によって、私自身も大いに学びました。
しかし、かつて、私が他の大学で教鞭をとっていた時と類似した幾つかの、大学教育における次のような問題点も浮かび上がってきました。第一は、4年生の就職活動や教育実習などの事情で授業を欠席せざるを得ないケースがあるので、講義の流れについて来られない場合もあること。第二は、学生に受け身の意識があるため、一時間の講義に対して一時間の予習や復習を前堤とした単位制度による講義が行われていることの理解が不足していること。第三は、極めて良く勉強する学生と、そうでない学生とのギャップが比較的に大きいこと。第四に、これは、後には変化しましたが、最初の頃は教室で手を上げて質問する学生が少ないこと等でした。この点については、私のエッセイ「問いを学ぶ教育」<中央公論>http://www.bioethics.jp/lichtreview95_3-j.htmlを御読みいただければ幸いです。
恵泉女学園大学では、FD委員会(Faculty Development/教員の教育改善開発研修委員会)を定期的に開催して、現代の大学教育を実践するための工夫改善に努めています。昨年のFD委員会では、建学の精神である「聖書」「国際」「園芸」をめぐって担当教員の問題提起がなされたあと、全員で真剣な討議が行われました。その他のFD研修のテーマとして、「新しいタイプの教育の試みー園芸と子育て支援」「オンデマンド教育とバイオエシックス」「地元多摩市との連携プログラム」「恵泉学生気質の変遷」などがありました。今年度は「初年次教育のありかた」について研修会を開催しました。
恵泉女学園大学の特色である「小人数教育」のメリットを生かしつつ、学生と教職員との距離の近さ、人間的・人格的な出会いとキリスト教の精神に基づいた「いのち」を大事にする教育をこれからも着実に展開して行きたいと願っております。

韓国・新羅大学からの訪問学生グループに語りかける学長(右)とリーダーの崔(チェ)教授
韓国・新羅大学からの訪問学生グループに語りかける学長(右)とリーダーの崔(チェ)教授