恵泉女学園大学

MENU
本学について

2007年3月

今月は、学長からのメッセージとして、去る3月16日に、本学の多摩キャンパスで行われた「卒業式の式辞」を下記に掲載します。

皆さん、ご卒業、おめでとうございます。
保証人、ご家族の皆様方にも、心からお祝いの言葉を申し上げます。
皆さんは「卒業式」を英語では何というか御存じでしょうか?"commencement"といいます。commenceというのは、「はじめる、開始する」という意味です。
学ぶことを終える式なのではなく、さあこれからいよいよ、新しい人生を始めよう、そう言う意味での「始まりのセレモニー」を意味するのです。
皆さん方は、この4年間、様々な学問や専門分野の、第一線にある、本学の優れた教員に学び職員に支えられ、また素晴らしい友人達に恵まれ、自分で考え、自分で判断し、自分で行動するスピリットを、恵泉女学園大学で学んできました。
本学の初代学長・村井先生は、開学式において恵泉女学園大学が「考える大学」「女性のための平和の大学」「地球大学」であるべきだという教育の展望をアピールされました。
それから19年後の現在、一人ひとりの人格を尊重し、個性を豊かに伸ばし、その才能を十分に発揮する教育を行う、質の高い、少人数の女子大学としての評価が、社会的にも知れ渡り、昨年は様々の嬉しい展開がありました。
たとえば、一般に広く知られ、良く読まれている「プレジデント」というビジネス雑誌があります。その昨年10月16日刊行・特別増大号では、恵泉女学園大学が全国の30女子大学中の「お買い得度」がナンバー・ワン、第一位でした。
また、つい最近今月の初めには、NHKの首都圏情報「今日は一都六県」の大学キャンパス訪問にも取り上げられ、この美しいキャンパスの映像と園芸教育の展開のありさまが注目を浴びました。
更に、昨年は文部科学省の「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」に応募し、他大学との厳しい競争に勝ち抜き、研究助成金を獲得しました。これは、恵泉が長年にわたり蓄積してきた、アジアや欧米諸国など、世界各地での長期・短期の海外研修プログラムや、国内でのコミュ二ティ・サービスラーニングなど、「キリスト教」「国際」「園芸」を柱とする、建学の理念に基づいて河井道先生が創立されて以来、ほぼ80年に及ぶ恵泉女学園教育の精神が評価されたからなのです。
私が本学の学長になったのは、昨年の4月からでしたが、今年卒業される何人かの皆さん方とはサマーキャンプや卒業リトリートでお目にかかり、色々とお話出来たのは大変に嬉しいことです。
私の専門は「バイオエシックス」という「いのち」の様々な問題の価値判断をめぐっての新しい学問分野です。私は、30年にわたって、タイ、ベトナム、スイス、アメリカの大学で、この新しい研究と教育に従事して来ました。
そこで、今日は私が世界の各地の大学で学生達に講義して来たいのちのメッセージについての4つのポイントを、卒業する皆さん方にお伝えしたいと思います。
その第一は、自分のいのちの基になっている、自分が生まれた国の歴史や文化を、正しく、かつ批判的に学ぶということです。私は、ほぼ30年ぶりに帰国してショックを覚えたことがあります。それは、日本人の中には国際的に通用しない、間違った歴史の見方に、疑いも抱かないで賛同したり、自分の国の正しい歴史に、無知な人々がいるということでした。
しかし、恵泉で学んだ皆さんは、日本の歴史を批判的に学び、正しく理解する訓練を受けました。この考え方は、卒業し、社会に出てからもますます大事になります。国際的な幅広い視野に立って、日本人であることについて考え続けるとともに、国境を越えたグローバルな、いのちのネットワークの中に生きてください。
第2に、いのちといのちをつなぐコミュニケーションのための外国語をマスターすることが大事です。
皆さんがたは、国際的に使用頻度の高い「英語」を、本学で一生懸命に学びました。その他に、異なった文化の言語を学んだ方もおられます。いまや、自国語だけでなく、数カ国の外国語をマスターすることが、要求される時代です。
語学や文化についての教育が充実している本学で、欧米やアジアなどの様々な外国語の基礎・応用や文化を学び、海外の研修などで、実力を発揮し、コミュニケーションが出来るようになった方もおられます。これからも、まだまだあるチャンスを生かし、語学の勉強を続けましょう。語学や他の文化の理解はこれからはじまる皆さん方の人生で、必ず新しいいのちのコミュニケーションを豊かに創り出すのです。
第3番目に、いのちを支え合うために、自国または外国で「ボランティア活動」をするということが大事です。既に、この恵泉で体験した皆さんも多いかと思いますが、社会人になってからも、ボランティア活動を続けて下さい。
欧米諸国では、ボランティアは学生時代で卒業ではなく、一生何らかの形で行っている人が多いのです。
私自身も、学生時代には日本の各地、タイ、フィリピン、ネパールなどで、ボランティア活動や農村ワークキャンプに参加し、いのちの支え合いを体験しました。
その後、アメリカでもホームレスの人たちへの食事サービスや、ホスピスケアなどのボランティア奉仕を通して、ローカルな、そしてグローバルないのちの支え合いを学びました。
第4番目に、いのちを輝かすために、国際的な幅広い視野での「人権マインド」を養い、それをこれから始まる仕事の現場で生かして下さい。何かが間違っている、「人間としての尊厳」が侵されていると思った時には、黙っていないで正しいと思うことを、堂々と発言をしましょう。黙っているということは、間違ったこと、不正義を認めてしまうことになります。
「イエス、ノーをハッキリ言える人におなりなさい。」と、本学園の創立者河井道先生はしばしば、語っておられます。私も、かつて少年時代にこのような河井先生のお話を直接にお伺いし、大きく心に残る影響を受けたからこそ、今の私があるのです。
恵泉女学園大学の学長に就任して、私が大変に嬉しく思ったことは、このようにバイオエシックスの研究と教育を通し、世界の各地の大学で、私が語って来たメッセージの内容が、恵泉では実践されているということでした。
わたくしたちの大学は、これらの4つの、いのちのポイントを意図した教育プログラムを、建学の大きな柱である「キリスト教」「国際」「園芸」と連動させているのです。平和、環境、多文化共生と文化の理解、語学・コミュニケーションなど様々な教育カリキュラムやプログラムを展開している、世界でも本当にユニークな大学・大学院です。
その、本学に学び、豊かな個性を伸ばし、大きく成長された皆さん方は、この意味で、21世紀を生きるのに最も相応しい地球コミュニティーの一員として、未来の日本に、そして広くグローバルな世界のコミュニテイーに貢献することを確信しています。
最後に、河井先生が次のようなことを語って下さったことに注目したいと思います。
すなわち、私たちが、幅広い視野に立って、ものごとを良く見極め、「困難に立ち向かう冒険の精神」をお持ちなさいと言われたことです。
そして、毎日、神様の御心にかなうように、自分を捨てて、良い事のために冒険する人々にこそ、大きな喜びが湧いてくると、語っておられます。
本日の式の最初に、読んで頂いた聖書に書かれてありますように、皆さん方が、「この世にあって星のように輝く」ために、そして聖書を通し学んだ「いのちの言葉をしっかりと保つ」ために、いつも、いのちのルーツである聖書にたちかえり、恵泉女学園大学で学んだことを誇りに思い、新しい人生の冒険へとスタートして下さい。
皆さんの人生の、新しいいのちの「始まり」に、神様の豊かな恵みと祝福がありますようにと、心からお祈り申しあげつつ、本日のcommencementにあたっての私の式辞を終わりたいと思います。
皆さん方の新しい「始まり」、おめでとう!

2007年度卒業礼拝・卒業式
2007年度 卒業礼拝・卒業式