恵泉女学園大学

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2006年5月

5月の多摩キャンパスは、緑の薫る樹木に囲まれ、学長室の窓からも見える大きな花壇には風鈴草やデルフィニウムなど美しい花が一杯に咲き誇っています。
先週のスプリング・フェスタは予想外の素晴らしい天気に恵まれ、多くの参加者でキャンパスは溢れました。楽しいオープニングセレモニー、チアリーダーの皆さんのパーフォーマンス、学長講演、シンポジウム、ハンドベル演奏や南米や沖縄のコンサートなどをはじめ、ゼミの報告、デリック先生のフラワーアレンジメント、短期・長期の海外研修やワークキャンプ報告、園芸体験・展示や恵泉グッズ・お花や野菜の販売なども大好評でした。
渡辺幸子多摩市長がご多忙の中、「学長を囲む会」にもご参加くださり大変に嬉しいことでした。地域の住民の皆さんや教会、恵泉会、同窓会、信和会などの方々によるコーナーや、保証人相談会・入試問い合わせなども活況を呈し、一同大いに喜んでおります。
実行委員会の皆さんをはじめ、すべての参加者、関係者の皆さん、本当に有難うございました。
5月の学長便りは「私の大きな夢」と題して下記に掲載しましたので、是非お読みくださりご意見などをお寄せいただければ幸いです。

私の大きな夢-育ち行く恵泉的園芸文化の新展開を求めて

恵泉女学園大学・学長 木村利人
私は、かつてこの世界に存在しなかった「Bioethics」という新しい学問分野のパイオニアの一人です。
この学問を日本では、私が今から四半世紀前に立ち上げました。
私が構想したバイオエシックスは、先端生命医科学技術・医療・環境などについての倫理問題をめぐっての応用倫理学としての「生命倫理」をも含みつつ、それとは異なる新しい発想でのさまざまな学問分野、たとえば医学、看護、生物、社会、政治、経済、農業、開発、宗教、哲学、倫理、法学、文学、芸術、文化などに関連するあらゆる「いのち」、すなわち「bios」の問題をめぐっての価値判断の基準すなわち「ethikos」としての公共政策作りを求めての、私の造語による超学際的、Supra-interdisciplinaryなバイオエシックスなのです。
伝統的な学問の縄張りを取り払い、相互に協力し、挑戦し合う中から未来を展望し、開かれた共同作業によってガイドラインなどを作る新しいグローバルなスケールの学問です。
このような考え方は、医療やいのちの専門家と称する方々には、なかなか受け入れられませんでした。しかし、徐々にかなりの方々の理解と協力により、それから26年を経た今、「バイオエシックス」は、カタカナ語として定着し、国語辞典にも入りました。
高校の倫理の教科書の一章にも登場し、センター入試にも取り上げられ、医師国家試験の出題基準にも入りました。文部科学省や日本医師会にも正式に担当部局ができました。ユネスコでは、昨年10月の総会で、「バイオエシックスと人権に関する世界宣言」を可決しました。
私は、今まで全く存在しなかった、この超学際的な新しい学問を立ち上げたプロとして、今まで世界の誰もが体系的に、アカデミックに統合された形ではとりあげてこなかった新しい分野を、恵泉の良き伝統を踏まえ、従来とは異なった発想により、恵泉女学園大学に立ち上げられないかを夢見ているのです。
その夢は、どうにかして、正に時代を超え、また新しい時代が要請し期待している恵泉的園芸文化とCreative Artとを結びつけたいということです。すなわち、Horticultural Art,とCreative ArtとがCaring ArtとHealing Artを媒介にして統合され、一緒になったような、個性の光り輝く新「園芸文化・創造芸術学部」のようなものを私たちの恵泉女学園大学に作りたいという大きな夢です。
園芸文化や音楽、美術などのCreative Artはともにバイオエシックスが展開してきた「ケアのわざ(Caring Art)」と「癒しのわざ(Healing Art)」とのコンセプトにおいて相いつながる要素を有しているのだと、私には思えるのです。
Horticultural Artにおける「ケアのわざ」と「癒しのわざ」としての園芸セラピーやアロマセラピー、そしてCreative Artの展開である音楽や美術セラピー、心とからだの表現芸術であるダンスやドラマ、プレイセラピー、さらに様々な表現芸術などもExpressive Therapyと結び合わせ、Caring ArtとHealing Artにおいて統合した世界で最初になるであろう新学部を作りたいというのが私の強い願いなのです。
そのためには、おそらくは「バイオエシックス」という私のSupra-interdisciplinaryな専門分野での学問的蓄積と経験が大きく貢献できるでしょう。しかし、現段階でこれはあくまでも、私の大きな「夢」です。
恵泉らしい園芸文化の素晴らしい伝統の蓄積をふまえつつ、今から取り組まなければならない緊急の課題としての大きな「夢」が、私の考える「園芸文化・創造芸術学部」なのです。
河井先生は、かつて、次のように書かれておられます。
「春がきた。庭も畑も人手を待っている。『早く手入れして種をまいて欲しい、われらを美しくして役立たせよ』と無言の叫びを挙げている。山も海も彼等の中にある富源を正しく利用してよと、神の子の現れを待っている。しかるに・・・・自然界はあらされるし、人間界は道義の低落、闇の中に呻吟しているのが実情である。神の子の来る時は自然界も家庭、社会、国家も独自の特性を発揮し存在の真価を示し、あらゆる天地万有が歓喜に満つるときである」。(「恵泉」誌、第16巻134号、1947.3.「巻頭言」)
河井先生が述べておられるように、神の支配のうちにある自然を美しく役立たせるのは、神により生かされている私たちの神への応答(責任)であると思います。
恵泉の園芸文化が、神の御恵みのうちにあって、ますます豊かに育ち行き、私が構想するような「園芸文化・創造芸術学部」をつくるという大きな「夢」が、学生、教職員、卒業生を含め、多くの関係者との間に共有され、実現されるよう、新しく就任した学長として心から祈り、願っています。
(恵泉女学園大学園芸文化研究所報告「園芸文化」第3号、2006年5月刊)

学長からのメッセージ (2006年5月) 木村利人