しなやかに凛として生きる

歌うことは生きること
「今」を大切に、音楽とともに歩み続ける

シンガー&ソングライター
平田 志穂子さん

― Profile ―

人文学部 国際社会文化学科 2002年度卒
(現 人間社会学部 国際社会学科)

2003年からAN MUSIC SCHOOLでボーカル実技を学ぶ。
2008年、ゲーム『ペルソナ4』のボーカルに抜擢される。2012年、さいたまスーパーアリーナでの「アニメロ サマーライブ」に出演。2013年、2015年「ペルソナ スーパーライブ イン 武道館」にてメインアクトの一人として立つ。2015年にアルバム『The Stories of a Day』を、2016年にはアルバム『7:08』をリリース。

ゲーム『ペルソナ4』のテーマ歌唱が転機
地道な活動が大きなチャンスへ

歌を歌う仕事をしています。依頼を受けてレコーディングを行う他、自分の作品を創ってライブ等を行っています。ボーカリストとしての活動を始めたのは大学3年になってから。大学内では聖歌隊で、学外ではソウル系バンドで歌っていました。絶対歌手になると決め、卒業後しばらくは、昼間は図書館のアルバイト、夜や休日はミュージックスクールのレッスンとバンドの練習に明け暮れていました。

しかし、自信を失ったり、音楽が嫌いになったり、不安と焦りに押しつぶされそうになったり、と試練の連続。それでも、チャンスを掴むため、デモテープ(音源)を複数作って、ミュージックスクールに預けたり、歌える仕事があればどこへでも出かけて行きました。

転機は2008年。PlayStaion2用ゲームソフト『ペルソナ4』のテーマなどを歌うボーカルとして選ばれたのです。ミュージックスクールに預けていたデモ音源が音楽監督の耳にとまり、直接連絡が。英語で歌えてラップに対応できることが評価されました。その後テレビアニメ『ペルソナ4 the ANIMATION』の主題歌も歌うことになり、武道館や横浜アリーナでのライブ、全国ツアーへの参加など、次々と夢が叶っていきました。

答えのない問いに直面したとき
支えてくれる言葉「明日のことを思い悩むな」

中学から大学まで10年間を恵泉で過ごしました。礼拝で聖書を読み、聖歌隊で歌い、パイプオルガンやハンドベルの響きに包まれるなど、キリスト教や宗教音楽に触れたことの影響ははかりしれないほど大きいと感じています。そして恵泉では、生きていくための「自分との向き合い方」を教えていただきました。それは、真実か否かを自分に問う「智慧」というようなものです。

人生にはどこにも答えのない問いに直面することがたくさんあります。特に卒業後の私は、"自分の理想"と現実とのギャップに思い悩む日々が続いていました。そんなとき、恵泉で出会った「明日のことを思い悩むな」という聖書の言葉が心に浮かびました。そして、「思い悩む」という言葉を辞書でしらべたのです。「わからないことをあれこれ考えて苦しむこと」。そうだ。私はいつも「わからないこと」についてもがいていたのだ。チャンスがくるのか、努力が報われるのか、それらは文字通り「わからないこと」なのであって、考えてみたところでどうしようもないこと。だから、それは自分の領域ではない。

それに気づいてからは、目標のために「今」を犠牲にする生き方から、今、ただ目の前のことに最善を尽くす生き方へとシフトしていったのです。そんな気持ちで過ごす頃からだんだんと仕事が増えていき、思い悩んでいた日々には想像もつかなかったチャンスをいただいたのでした。

たくさんの人との繋がりの中で
私は生かされていると感じる日々

恵泉に入学したのは、2歳上の姉の影響です。姉はキラキラと眩しく、ハツラツとしており、憧れの存在でした。後を追いかけて入った私も、恵泉生活を楽しみ、自分らしさを育て、私の中に生まれる問いに耳を傾けるようになりました。心を落ち着けて自分と対話する。自分の内奥からのささやきを受け止め、それを音楽として紡いでいく。私は恵泉で、表現者として生きる力の源泉を与えられたと感じています。

さらに、こうしてキャリアを積み重ねるうちに、この仕事は多くの出会いや繋がりによって成り立つのだと感謝の気持ちで捉えるようになりました。注文された仕事であれ、自分が企画した仕事であれ、作家さんやディレクターさんと様々なやり取りをしながら行うのですが、最終的には一つの形に落とし込んでいく作業がとてもエキサイティングでやりがいがあります。思い描いたイメージを、たくさんの人と心を一つにして形にしていくことに、大きな喜びと生きがいを感じています。

これまで2枚のオリジナルアルバムをリリースしました。歌は物語の世界。これからも言葉を大切に歌いたい。今は3作目のアルバムの構想を練っているところです。ライブも開催したいと思っています。