輝ける場所を探して:ダッカからジョグジャ、そしてコロンボへ

山口絵理子著 講談社(589.2/Y)

「途上国から世界に通用するブランドを」という理念のもとに製品を発表してきた「マザーハウス」。現地の自然や人の魅力を知ってこその「モノ作り」。製品の完成度への妥協のない姿勢、製品が世に生み出されるまでの著者やインドネシアの現地の職人たちの試行錯誤の格闘は、「援助」を超えたモノ作りの醍醐味を熱く伝えている。(A)

 

ラングザマー:世界文学でたどる旅

イルマ・ラクーザ著 共和国(904/R12)

小説を読んでいる間の「読み進める言葉や場面が様々な連想や記憶を呼び起こす」時間、「過去へ未来へと何千年も跳躍できる力強い『遅さ』」。新しい情報を受け止めてひたすら前に進んでいく日々に、読書が与えてくれるそんな特別な時間の流れ。それが著者のいう「ラングザーマー」(ドイツ語で「もっとゆっくりと」)な時間なのだ。(A)

 

世界マヌケ反乱の手引書: ふざけた場所の作り方

松本哉著 筑摩書房(304/M)

書名を見ただけでは何が何やら...なのだが、この閉塞感いっぱいの世の中で「マヌケな仲間が集まって、お金をかけずに楽しくやろうぜ!」という本。どうやって仲間を探し、お店をつくり、どこに行けば楽しめるか。マンガチックな表紙をはじめ、本文も「いいんじゃねえ」等、タメ口のノリで書かれているので、まずは読んでみてひたすら楽しんで下さい。(Y)

 

イラストで見る昭和の消えた仕事図鑑

澤宮優・平野恵理子著 原書房(384.3/S)

昭和時代の仕事を、イラストつきで紹介した一冊。仕事は時代を映す鏡であり、こうした本は資料としても貴重だ。時代とともに消えていったのもあれば、消えつつある、或いは今も細々と続いているものもある。平成生まれの若い人たちは知らないものが殆どだろうが、昭和世代には、懐かしいものが一杯。(Y)

 

N女の研究

中村安希著 フィルムアート社(335.8/N)

「○○女」流行りのこのごろだが、「N女」は初耳。非営利組織であるNPOなどのソーシャルセクターで働く女性の総称らしい。なんとなくボランティアのイメージがあったり、収入や身分が不安定のような感じもあり、就職先としてはまだそれほど認知されていないかもしれないが、非営利NPOを選ぶ女性たちがふえているという。なぜ彼女たちは高収入や「有名企業」での身分を捨てて、非営利組織に移ったのか。大企業に疲れたからか。変わったのは女性たちか、むしろ日本の社会の変化の中から彼女たちが出現したのではないか-著者はこの問いの答えを求めてNPOの代表者ではなく、そこで働く女性職員たちを取材している。(M)

 

ハイジが生まれた日:テレビアニメの金字塔を築いた人々

ちばかおり著 岩波書店(778.7/C)

原作本が好きだったのでアニメのハイジも見てはいたが、この番組を作り上げるまでにこれほどの熱い思い、苦労、喜びなどがあったとは!とことん「本物」であることにこだわり、それを目指して結集したのは今や巨匠となっている人たち。作品の舞台であるスイスへも出かけたし、テーマソングのヨーデルの部分はスイス人親子に歌ってもらった。アニメ制作現場はそのこだわりのためにある意味、苛酷なものだったという。もう一度、「アルプスの少女ハイジ」が見たくなった。(M)