入学式 式辞「恵みの泉で輝いて」

2019年04月08日
恵泉女学園大学学長 大日向雅美

皆様、ご入学、おめでとうございます。
花々が美しく咲くこのキャンパスに皆様をお迎えできましたことを、教職員一同、心から嬉しく思っております。
ご列席のご両親・ご家族・保証人の皆様もさぞお慶びのことと、心からお祝いを申し上げます。

さて、新入生の皆さま、今日から新しい生活が始まります。
"愛の泉の湧きいでし"と学園の校歌の冒頭に刻まれている通り、恵泉での学びは恵みの泉のごとく皆様を輝かせ、この先の長い人生のかけがえのない基盤となることと思います。

そのためにまず大学・大学院は何を学ぶところかを考えてみましょう。
大学の学びは知識の修得ではありません。ここがこれまでの学びと大きく異なる点です。
もちろん、知識は大切です。初等・中等教育で身につけていらした知識は、人として生きていくうえでの基本。足りなかったものを補い、強化していく努力はとても大切です。

そのうえで、大学・さらに大学院は知識の用い方を学ぶところです。
ご自分がこれからどう生きていくか、そのときの世界や社会はどうなのか、そのどこを変えたいのか、自分はその中で何を、どのように担う人でありたいのか、一言で言えば、自身の世界観を築き、それを実行する力を養うところです。

近未来はこれまでにない変動が予想されています。人工知能(AI)やロボットなどの技術革新によって、あと10年で半数近い仕事が不要になると予測されています。人間にしかできない仕事を見出し、それをこなす力が、この先、経済界や社会から要請されていきます。それは認知能力から非認知能力への大転換です。
何を知っているかではなく、困難な課題に直面したときに、「なぜ?」と現状を分析し、解決に向けて工夫をこらし、目標の達成まであきらめずに、他の方々とも力を合わせて頑張り抜く力、そのためのコミュニケーション能力が必要とされます。

厳しい近未来予想ですが、女性にとっては大きなチャンスだと私は考えています。非認知能力・コミュニケーション能力の潜在力は女性にこそ長けていると言っても過言ではないからです。歴史的・社会的に女性であるがゆえの生きづらさや差別に遭遇しながら、人生の岐路に柔軟に対応する術を女性たちは身につけてきました。そうして先輩の女性たちが辿った険しい道のりに続く皆様の前に、今、女性活躍の道が開かれつつあります。女性がのびやかに羽ばたくために、日々の暮らしにしっかり根ざし、世界に目を開いて生きていく力を学び、身につけ、社会で生かすことが、これほどに求められている時代はありません。

本学はすでにそのことに着眼し、女性活躍時代にふさわしい真の力を磨くための確かな教育理念とそれに基づいたカリキュラム、学修環境を整えて、皆様をお迎えしております。

恵泉の学びの基本は3つの礎科目です。自分を愛するように他の人を尊重する心を「聖書」に。アジアや欧米の各地に出向き、価値観や生活習慣・文化の違いを体験して、偏見や差別に立ち向かう力を「国際」に。土に親しみ、植物を育て、いのちと自然を慈しむ心を「園芸」に学びます。
この礎の上に各学部・学科・大学院研究科の学びの専門を深めていきます。

そのための恵泉での学び方には3つの特徴があります。
一つはゼミでの学びを重視していることです。
1年生の教養基礎演習をスタートに、学部の4年間、大学院では2年間、ゼミでの学びを基本として、全員が卒業論文・卒業制作・修士論文を仕上げます。少人数のゼミだから、疑問に思ったことや自分の意見を安心して言い、自分と異なる意見にも耳を傾け、違いを認めつつ、互いを尊重する心と態度を養えます。

恵泉での学び方の2つ目の特徴は、キャンパスの外、国内外での学びのプログラムを豊かにもっていることです。多感な若い時に文化や習慣を異にする人々と共に暮らす経験から贈られるものには、計り知れない大きさと重さがあります。

3つ目の特徴は、学科・学部・研究科の壁を越えて、全教職員が一人ひとりの学生の学びと学生生活を見守り・支えることをモットーに、そのための仕組みを整えていることです。学生食堂の一角にラーニングコモンズコーナーを設け、学生のさまざまな悩みや質問に答えています。また特に学部では、大学には珍しい学年担任制を設けています。恵泉に集う私たちは学生の専門的な学びを担うアカデミックスタッフであると同時に、学生生活の日々を支え、確かな将来を支えるパートナーでありたいと願っています。

以上の本学の教育理念とそれに基づいた学びの特徴は、「教育のきめ細やかさ」「国際性」「文部科学省のインターンシップ表彰」などで高い評価をいただいておりますが、何より嬉しいことは「入学後、生徒を伸ばしてくれる大学」として高校の先生方から高く評価していただいていることです。

恵泉で学んだ先輩の学生たちの声をご紹介しましょう。

「恵泉ではやる気次第で、いくらでも成長するチャンスがたくさんあり、それをサポートしてくれる環境が整っています。私は高校時代、自分がこんなに真面目になって勉強し、キャンパスアテンダント(CA)として活動することなど夢にも思っていませんでした。今とても充実した大学生活を送っています」

もう一人の学生の声です。

「私は以前から自立した強い女性になりたいと願っていました。そのために自分の弱さを隠すことが強さだと思っていました。けれどもそれは勘違いだった。本当の強さとは自分の弱さを受け入れ、愛すること。自分の弱さをあるがままに受け入れることができてはじめて他者の弱さも受け入れることができる。恵泉での学びは他者の存在の必要性に気付かせてくれました。今、私は恵泉の学生であることに誇りをもっています」

大学院を修了した学生の声です。

女性の人生には、受けた教育とその後のライフコースの非連続性という現実が待ち受けています。私が「主権者教育」をテーマとした論文を執筆したのは、自分の人生の設計図を自らで描きたい。これは私自身の願いであると同時に、これからを生きる女性たちもそうあって欲しいとの思いからです。それはまっすぐなきれいな力強い線でなくてもいい。曲がったり描き直したりしたものでもいい。時には消えそうになっていたとしても試行錯誤しながら描き続ける......。そのペンを自らの手に持つことが「主権者」としての「わたし」を生きることであり、創立者河井道先生が言われた「汝の光を輝かせる」ことではないかと思います。私は本当にこの恵泉の空間に癒やされました。美しい花と緑、そしていつもきれいに清掃された清々しいキャンパスで心の平安を保つことができました。

恵みの泉のもと、自らの輝きを見出している先輩たちの後に、どうか皆様も続いてくださることを願っております。

最後になりましたが、今日まで大切に慈しみお育てになっていらしたお嬢さまを本学にお預けくださいましたご両親さま・ご家族・保証人の皆さまに深く感謝を申し上げます。
恵泉女学園大学は今から90年前、平和な社会に尽くす自立した女性の育成を目指して恵泉女学園を創立した河井道先生の女子教育の理念を女子高等教育機関である女子大学として継承し、女性活躍時代にふさわしい女性の育成に努めております。
小規模な女子大学ですが、そうであるからこそ一人ひとりを大切にした教育に努め、お嬢様がこの先の長い人生において生涯、自分らしく輝き、身近な方や社会に尽くすことができる女性として活躍できるよう、大切にお預かりさせていただきますことをお約束いたしまして、学長としての式辞とさせていただきます。

学園長からの祝辞
全教員紹介
保証人の皆様へご挨拶