韓国訪問のご報告

2018年10月08日

10月1日から3日まで韓国出張のため、先週の「学長の部屋」はお休みさせていただきましたが、本日はそのご報告です。

今回の韓国訪問の目的は、10月20日の国際シンポジウム「恵泉X梨花 女性活躍の時代の新しいリーダーシップとは」の打ち合わせのために、梨花女子大学金恵淑(キム・ヘスク)総長にお目にかかること、そして過去の3回のシンポジウムでお世話になったアジア女性学センターの皆様にもお会いし、これまでのお礼と10月20日ご来日のお願いをすることでした。加えてこの機会にソウル市教育庁からいただいたご招聘に応えて講演をさせていただくことにありました。

梨花女子大学 本館前で

梨花女子大はその歴史と規模において世界屈指の女子大であることは承知していましたが、想像をはるかに超える壮大な設備と教育システムを整備していることに圧倒される思いでした。

大学に到着して、まず学生アンバサダーの構内案内を受けました。母校を愛する気持ちと誇りに満ち溢れた学生アンバサダーさんの説明の中で、特に印象的だったことを2つ、ご紹介します。

1つは、広大な構内の正面にそびえる本館です。3階建てですが、この建物に入ってすぐの1階に総長の執務室があります。総長の執務室は通常であれば建物の上階に置かれるところ、なぜ1階の入り口近くなのか。それは女性が学ぶことを世間がなかなか認めないかつて朝鮮近代の時代に、梨花で学んでいる娘を連れ戻すために押し寄せてきた保護者たちを、当時の総長自らが盾となって学生たちを守ったことを梨花の女子教育の伝統として今も大切にしているからとのことでした。

学生アンバサダーさんのお気に入りのもう一つのスポットは、サムスンホールです。サムスンの寄付で作られた、収容人数800名余りの大きなホールですが、入学式の直後に、総長自らが新入生の保護者に向けて梨花女子大の教育について語り、それに対して保護者が質問する場になっているとのことです。上級生になって、そのセレモニーに手伝いとして立ち会う機会を得て、改めて総長の教育理念の熱さと共に、これまで育ててくれた親の思いを知り、学ぶ意欲を駆り立てられたと語ってくれました。

また、梨花歴史館には梨花が女子教育にかけた100余年の歴史が陳列され、その時々の政治経済の状況の波に揉まれながら、女性と学問の関係を守り、今日まで高めてきた足跡が記録されています。梨花が女子教育の燈を灯しつづけてきた裏に多くの国と人々の尽力がある一方で、植民地統治下で日本が女子教育においても韓国の文化を否定した爪痕を示す写真が一枚ありました。説明者は触れなかったことですが、直視しなくてはならないことと胸の痛む思いでした。

その後、総長公邸で総長にお会いし、10月20日のシンポジウムについての打合せや総長の関心が高い恵泉の園芸についてなど、お話をいたしました。昼食は総長公邸でおもてなしを受けましたが、そこはイギリスのエリザベス女王(1999年)、ヒラリークリントン前米国務長官(2009年)などの賓客をもてなす館で、梨花の関係者もめったに入らない場所とか。総長が恵泉を大切に思ってくださっていることに感謝の思いでした。

前述の歴史館で見た写真についての思いも正直にお伝えしたところ、「たしかに韓国と日本には歴史的な問題はありますが、しかし、それはただ2国間の問題ではありません。その時々の種々の要因が複雑に絡み合って起きたこととして私はこの問題を認識し、歴史をとらえております」と、一瞬、うっすらと涙ぐんで応えてくださいました。法哲学者らしい落ち着いて、深みのあるすばらしい方でいらっしゃいました。10月20日のご講演がとても楽しみです。

その日の午後は、ソウル教育庁で「今日の青少年問題の現状と課題」と題して、講演をいたしました。ソウル市曺喜昖(チョヒヨン)教育長が陣頭指揮をとって準備をしてくださった熱意が伝わり、ソウル市の教育関係者250名余りが集まってくださり、講演内容に対しても熱心なご質問をいただきました。次代を担う若い人たちのことを思う先生方がいろいろ悩みながら、日々、教育に当たっている様子は、日本も韓国も同じであると思いました。特に恵泉の「生涯就業力」について、これからの女子教育のあり方として、関心を示していただけたことはとても嬉しいことでした。

訪韓は私にとって初めてで、またいろいろと重い役目も担ってのことでしたが、本学の李泳采先生(大学院平和学研究科科長)が梨花女子大やソウル教育庁との事前の打ち合わせを昨年から周到に準備し、この3日間は通訳をかねて同行してくれたこと、そして、大学教職員のさまざまな支えを得て、無事に全行程を終えることができたことを、ここにご報告させていただきます。

歴史館を案内してくださった学生さんたちと
サムスンホールの説明をする学生アンバサダーさん
総長公邸で昼食のおもてなしをいただきました(左側中央が金恵淑総長)
アジア女性学センターの皆様と(右端が李泳采先生)
ソウル教育庁講演ポスターの前で
素敵な講演資料集も作成くださいました
講演中
講演中
講演後のトークショウで
講演後 ソウル教育庁の方々と
明洞でチェジュ島料理のおもてなしをいただきました
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