最終講義に託す教員の思い

2018年02月05日

1月の最終木曜日(1月25日)に杉山恵子先生の最終講義がもたれました。
杉山先生のご専門はアメリカの歴史、主に19世紀の女性・マイノリティをめぐる社会・文化です。最終講義のタイトルは『「共和国」と「帝国」~19世紀アメリカ合衆国の歴史から~』でした。

最終講義は、授業とは別日を設けて大教室で行うのが通例ですが、最終講義はご自身の最終授業日に受講生を対象に行いたいという杉山先生の強いご希望で、いつもの授業時間に、いつも講義をなさっているC棟104教室で行われました。

先生の第一声は、文字通り学生たちに訴える次の言葉でした。

A Book a Day Keeps the Doctor Away

有名なAn Applea Day Keeps the Doctor Away のAn AppleをA Bookに置き換えて、ニューヨークに留学され、コロンビア大学で学ばれた若き日々の生活からまず語り始められました。杉山先生の流暢で美しく卓越した英語力は、今や学内外で広く周知されているところですが、若い時は一日1冊英書を読破することは必ずしもかなわなかったとのことです。ただこの目標を常に心に留めて努力する歳月の中で得たものは、たとえ内容や主張に違いがあるとしても、いずれの本の、いずれの著者にも敬意を払う心だったと言われました。

そうした蓄積がやがて「社会史」「ジェンダー研究」「帝国主義研究」という自身の研究の地平をなしたことを説明されたうえで、最終講義の中身へと入っていきました。
具体的なテーマは

  1. 異質な「他者」に出会ってコントロールする
    看護と公衆衛生にかかわる女性たち
    清潔指導としつけ、隔離と排除
    やさしい目線に潜む暴力性
  2. 異質な「他者」に出会って変わる
    ハルハウスの女性たち
    反戦、福祉国家、宗教的寛容と多文化社会
    民主主義を問う

日頃、授業を受けている学生たちは、ノートテイクにいそしみながら、先生のユーモラスな発言に笑いで応えたりうなずいたり、いつもの講義光景が彷彿されました。
一方、私は内容の深さとすばらしさに圧倒されましたが、専門外のことが多く、ここでご紹介するだけの力がないことを、申し訳なくも残念にも思います。

ただ、最後に言われた先生の次の言葉が深く心にしみました。

今日、お話したことはアメリカが舞台・題材でしたが、けっしてアメリカに特化したこととは考えていません。普遍ということを疑う大切さを考えてほしい。異質なものに接する大切さは同時に異質なものに接することで自身が変わる、ときには自身が崩れ落ちる覚悟も必要です。
恵泉は少人数教育です。少人数のゼミや講義だからこそ、恐れることなく自分の意見が言える。違う意見に接し、自身を顧みる機会が豊かに与えられています。この恵泉で30年余りにわたって教員生活を送ることができたことに心からの感謝の思いです。

杉山先生は大学のHPでも高校生へのメッセージとして次のように書かれています。

授業の始まりと終わって出たときの自分がどこか変わっている、新しい疑問が生まれている、そんな知的体験が出来る大学生活を送ってください。学んで身に付いたことは誰も奪えません。

まさにこのメッセージに込めた先生の信念がほとばしるような最終講義でした。
杉山先生と私は同じ時に恵泉女学園大学に奉職の機会を与えられました。以来、30年余り、ご一緒に恵泉の教育に携わることができたことに深く感謝しております。
本当に有難うございました。

最終講義中の杉山恵子先生
受講生から感謝の花束を贈られました
受講生から感謝の花束を贈られました
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