学長Blog★対談シリーズVol.7 この方と『生涯就業力』を語る

2017年03月27日

第7回ゲスト:カルビー株式会社 上級執行役員 鎌田由美子さん

カルビー上級執行役員。1989年4月、東日本旅客鉄道入社。大手百貨店出向や駅ビル等勤務を経て、2001年より「立川駅・大宮駅プロジェクト」のリーダーとしてエキナカ事業を手掛ける。05年より「ecute」を企画・運営するJR東日本ステーションリテイリング代表取締役社長。08年より本社事業創造本部にて「地域活性化」「子育て支援」を担当。13年JR東日本研究開発センター副所長を経て、15年1月東日本旅客鉄道退社。同年2月より現職。

「対談シリーズ」

国の施策として2020年までに女性の管理職を3割増やすことも掲げられています。そうした背景もある中で、注目される人気企業 カルビー株式会社で上級執行役員として舵取り役をされる鎌田由美子さんを今回ゲストにお招きしました。前職はJR東日本にお勤めされ、エキナカ事業「ecute(エキュート)」の仕掛け人でもある鎌田さん。カルビーへ転職後も、新しいブランドや商品への挑戦をし続けていらっしゃいます。仕事への想いをお聞きしました。

通過する駅から、集う駅へ。快適さを追求した「エキナカ」

---JR東日本のエキナカを立ち上げられた鎌田さんにお会いできて光栄です。切符を買って電車に乗るだけの駅が、エキナカができて駅に行くのが楽しくなりました。そもそもどうしてエキナカを作られたのですか?

駅がどう変わればお客様に笑顔になってもらえるか?を考えたのが原点でした。JR東日本が2001年からの中期計画の戦略の一つとして「ステーション・ルネッサンス」を掲げました。少子高齢化で乗降客は減少が見込まれるなか、駅の魅力はなんだろう?と立ち返った時に、1日1600万人(当時)が利用する駅を顧客の視点に立って『ゼロベースで見直そう』というコンセプトでした。それを生活サービス視点から具体的に考えるプロジェクトができて、エキナカに繋がりました。

---どの企業も現状打破するために改革をしていますが、エキナカ改革は鎌田さんならではの発想でしょうね。おいしい飲食店や手土産、雑貨など女性ならではの視点だと思います。

ありがとうございます。お店のこだわりもさることながら、重視したのは『通過する駅から、集う駅へ』と変わることです。私を含め他に男性社員2名のプロジェクトチームに課された使命は「集うとは何ぞや?」を突き詰めて、駅に居たくなるような空間づくりを行うことでした。

---昔のJRに比べて今は劇的にキレイになりましたし、お買い物をしない時でも駅に立ち寄るだけで楽しくなります。

それまで駅が殺伐としてcomfortable(快適な)ではなかった。お客様に「心地よく駅を利用してもらうにはどんな空間にしたらよいか?」を考えました。色や空調、照明、清掃など、これまで鉄道施設ではそれぞれの担当があり、考えもそれぞれでした。その目線を合わせ、理想の姿を着地点にしたのです。その空間が無いと、楽しませてくれるお店も成立しないというのがスタートでした。

多くの体験を糧にして組織を変えていく。

---エキナカのラインナップは女性好みのセレクトです。最初から人気店を集められたのですか?

今は多くの取引先のお店が出店希望をされていますが、最初は取引先を回っても10店中9店には断られました。「うちの店を出したらブランドイメージに傷つく」「あんなところで労働させられない」「駅で売る商品などない」とけんもほろろでした。

---前例がないことですと理解してもらうのが難しいと思いますが、あえて挑んでこられて素晴らしいです。壁にぶつかった時、どうやって打ち破られましたか?

結果的にぶつかることもありましたが、最初から賛同して頂けるほうが良いに違いありません。改革を行っていくうえで、「総論賛成、各論反対」となりがちです。たとえば、将来に向けて学校がこういう方向で改革してゆくという総論には賛成でも、ではそのために誰が何をするか?と各論になると、うちの学部は忙しいとか予算がないとか権限がないから...というような反対にあうのではないでしょうか。

---本当にその通りですね。鎌田さんはどうされたのですか?

「人・物・金」といった既存の既得権益を変えて改革を行うには、ドロドロになりながら各論を変えて、総論に掲げる着地点を目指すことです。トップが揺るぎない信念をもたないと変わりませんし、現場の後輩たちもよく働いたからこそ、お客様が喜んでくださる空間になったのだと思います。

管理職であっても完璧でなくていい。

---管理職になるまでも女性ならではのご苦労がおありだったのではないですか?

JR東日本は昇給試験が多くて私は二度落ちました(笑)。でもそういう経験があったおかげで、39歳で子会社の社長に就任した時に、昇給試験に落ちて落胆していた部下に、「一度くらい大丈夫。私なんて二度も落ちたのよ!」と言えました。試験に受からないとお給料が上がらないですし、仕事の幅も広がらないので、男女不問で皆が昇給試験は必死に受けました。私の時は上の代に女性管理職がいませんでした。しかし、試験をクリアしても管理職になるのを断る女性もいました。でも、管理職は全てのことをできなくてはいけない...と思う必要はありません。できないことがあってもいいんです。これは男女とも同じですね。

---とても勇気づけられるお言葉です。鎌田さんは幼少期からチャレンジ精神旺盛でいらしたのですか?

いえいえ、今でもそうですが...どん臭いんです私(笑)。役職としてのキャリアを目指したことはありません。様々な経験をしたいと思う中でキャリアはついてきました。経験を積んでいくことは、死ぬまで続くと思います。体育教師だった母は私を出産後、モダンバレエの教室を開設して教えていました。そういう母の姿を見て育ったので、女性が働き続けるのはとても自然なことでした。

---JR東日本からカルビーへ転職されて、現在は主にどんなお仕事を?

会長の松本から、長期的戦略とグローバルな視点から「新規事業を興したい」という要請があり、転職することを決めました。その際三つのことを言われました。世のため人のため、ワクワクすること、利益があがること です。これはメンバーにも共有しています。

専業主婦になる前に、社会で働くことに希望をもってほしい。

---カルビーは「働き方改革」でも注目されていますね。

日本は仕事をするうえで、会社の制約を受けることがまだまだ多いと思います。会社が求めているのは労働時間ではなく成果であるという文化がカルビーにはあります。成果を出すために働きやすい環境を整えていく。「コミットメント・アンド・アカウンタビリティ」を重視しており上司と契約を結んで結果責任を負う評価制度を取り入れています。家で仕事をしても、会社で仕事をしても、どちらでも成果が伴えば構わないのです。

---ワークライフバランスを変えていく素晴らしい労働環境で、就活の学生にとっても憧れの企業なのがわかります。

自分の性格に、どのような環境が合っているか?働きやすさを見極めるのは学生時代にはなかなか難しいとは思います。ですが、私は社会で経験を積むうちに見えてくることがありました。何もわからないのなら、まず目の前にあることをきちんとできるようにすること。すると周りにも認められます。それで会社の環境を自分がやりたい方向へ変えていけばいい。結果的に会社全体が働きやすくなると思います。

---まず自分自身が自立すること。それが世のため人のためになるように...と恵泉女学園大学ではそうした生き方を「生涯就業力」として、学生たちが身につけることを教育目標に掲げています。これから社会に出る女子学生に、鎌田さんからメッセージを頂けますか?

以前、女子大へ講義に伺った時、驚いたのは、専業主婦希望がかなり多かった。願わくば、働く経験をしてから選択してほしいと思います。私自身は好奇心が強く仕事を通じ、たくさんの人やワクワクにも出会えましたし、今もなおそれを持続しています。大学時代にいろいろな人と出会い、さまざまな経験を積むことは、社会に出てからきっと力になるはずです。

---今日の鎌田さんのお話を伺って、学生たちもこれからの人生、ワクワク感をもっていろいろなことにチャレンジする勇気をいただけたことと思います。本日は大変お忙しい中、本当に有難うございました。これからも益々のご活躍をお祈りしております。

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