天国の明るいイメージ‐ヴィース巡礼教会

2012年08月20日

ロマンティック街道、メルヘン街道と言えば聞いたことがあるだろう。○○街道というのはドイツの観光ポイントを結んだルートで、幾つもある。その一つが南ドイツ・バロック街道。これは日本ではあまり知られていない。が、なかなか面白いコースである。この街道を車でたどって行くと、なだらかな起伏のある草原の真っただ中に、あるいはちょっとした谷間や小さな村に、忽然とかなりの規模の建築物が見えてくる。近づいてみるとそれは教会、または修道院である。外側は白や黄色の明るい色。中に入ってみると、これまた白と金色そして水色を基調とした驚くほど明るい空間。白と金色を多用した明るい色調はバロック様式の特徴の一つなのだが、教会とはこんなに明るいものなのか、いや、きっと天国はこんな風に明るい光にあふれているのかもしれない。そんな気持ちになってくる。それにしても、こんな周りに何も無いような所に......

ヴィース巡礼教会も南ドイツ・バロック街道沿いにある後期バロック様式(ロココ様式)の教会である。ところで巡礼教会とは何か。巡礼は日本にもある。代表的なのはお遍路さん。だから巡礼教会は第○○番札所のようなものだ。ヨーロッパの巡礼教会と言えば、世界的に有名なのがサンティアーゴ・デ・コンポステーラ(スペイン)。だがそこに至る道筋にある幾つもの教会がみな札所、つまりは巡礼教会なのである。ドイツにも巡礼教会は数多い。さらに南ドイツ・バロック街道沿いの教会はほとんど全部巡礼教会である。では巡礼教会の条件とは何か。それは重要な聖遺物があるか、奇跡の起こった所に建てられたかである。ヴィースの奇跡は、農婦が屋根裏で発見し、部屋の隅に祀っていたキリスト受難像が、涙を流したというのである。そこでこの地にキリスト像を納める教会が建設されることとなった。1745年着工、1754年に奉献された。
現代でもこうした巡礼教会を訪れる人々がいる。ただ、サンティアーゴとは違い、ドイツでは団体を組み、バスで廻ることが多いようだ。
ヴィース巡礼教会の世界遺産指定は1983年である。

川戸 れい子(ドイツ近現代文学)

ヴィース教会外観

ヴィース教会内部