安全保障関連法の廃止を求める恵泉からのアピール

 衆議院での強行採決に続き、参議院でも強行に安全保障関連法案が採決されてしまいました。安倍首相自身「国民の十分な理解が得られているとはいえない」と認めていますが、審議の終盤では、「言論の府」である国会が、「言論」というものをあからさまに軽視し、語られる多様な意見を踏みにじり、反対の意見を封殺し、採決に向かって突き進んでしまいました。この法案の成立によって、憲法九条はいよいよ形骸化され、アメリカの世界戦略に従い、武器の使用を前提として自衛隊が世界各地に派兵されることになるでしょう。わたしたちは、これまで経験したことのない強い憤りを感じています。

 本学は創立以来、学園創立者河井道の志に従い、平和をつくり出す女性を育成することに取り組んできました。河井は「戦争は婦人が世界情勢に関心を持つまでは決してやまないであろう」と考え、教育理念のひとつに「国際」を採り入れましたが、本学では、必修で平和研究入門を学びます。その平和研究の第一人者ヨハン・ガルトゥング氏は、今夏、日本を訪れ、氏が提唱した「積極的平和」の概念と安倍首相の「積極的平和主義」とがまったく異なることを明らかにしました。安倍首相の「積極的平和主義」の具体化である安全保障関連法は、ガルトゥング氏のいう「消極的平和」(紛争がない状態)をも「積極的」に壊すものです。したがって、これは、本学の教育理念とは反しており、この法によって国家が戦争へと向かうことを私たちは深刻に懸念しています

 「イエス、ノーをはっきり言える人間におなりなさい」という河井道の教えに従い、この間、学園に連なる多くの者たちが声を挙げてきました。わたしたちは「自分で考えて判断できる人間」を育成する教育を決してあきらめません。平和をつくり出していくことをあきらめません。わたしたちは衆参両院での強行採決につよく抗議し、安全保障関連法の廃止を求めます。

2015年10月8日
恵泉女学園大学学長 川島堅二
教職員有志一同

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